【MINI取材】下水はどこに流れていくか?その1

片瀬山の下水道はどこにつながっているの?

片瀬山の重要なインフラ、下水道について知りたいと思いました。昭和生まれの方は、バキュームカーが街を巡回していたとか、田舎では黄金色の池が道端にあったとか、生活排水を流す水路の「どぶさらい」という共同作業があった、というのを覚えているかもしれません。その後浄化槽を備えた家が増え、そして下水道が整備されました。それによって、川の水はとてもきれいになり(1975年境川のBOD19mg/l→2019年同3mg/l BODは汚れの測定値)、下水道は都会生活の象徴でした。今では普段そういう事は目に触れなくなりましたが、災害時には否応なく下水の処理に直面します。そんなわけで、片瀬山の下水道はどこにどのように流れていくのか? を知りたいと思ったわけです。今回は事前に「ふじさわの下水道」や、ふじさわキュンマップで予習した上で、藤沢市の下水道総務課に直接伺って色々お話を聞きしました。

予習1:下水道って概略どうなっているのか
まず予習で調べた事を以下にまとめます。

汚水(おすい)と雨水(うすい)は道路下にある汚水管と雨水管に集められる。雨で一時的に大量の水が流れるので通常雨水管の方が太い。

上図に示したように、家庭(工場)からの家庭排水(キッチンや風呂・洗面)、水洗トイレの水(これらをまとめて「汚水・おすい」)は道路下の汚水管に流れ込みます。一方雨が降って宅地内の雨水ますや道路の側溝を通じて集まった「雨水・うすい」は同様に雨水管に流れ込みます。通常は汚水は下水処理場に集められ沈殿させたりバクテリアに食べてもらって浄化処理を行います。雨水は河川に放流します。片瀬山の皆さんの家付近の下水道はどうなっているのでしょうか?家の前の道路に出てみましょう。そこには下のような側溝の所々に空いた穴(集水雨水桝(うすいます)と言います)と道路の真ん中にある2種類のマンホールがあります。マンホールにはその地下の管に流れる下水の種類によって、「あめ」と「おすい」の2種類がある事がわかります。

写真の下にあるのは30㎝のステンレスの物差しです。片瀬山のマンホールは雨水、汚水それぞれ3軒に1つ程度の数が設置されています。マンホールには市の花 藤にあめ、市の木 黒松におすいと いずれも中央に書かれています。赤と青のマークは下水道台帳のマークに対応しています。

予習2:身の周りの下水道は調べられる
自分の家付近の下水道の配管(=どこを流れているのか)はふじさわキュンマップという地図サイト(→当ページでの紹介記事)にある「下水道台帳」という地図で知る事ができます。下図はその下水道台帳地図の筆者の家付近を拡大表示したものです。各家や道路の側溝から道路下の下水管(汚水管と雨水管)にどうつながっているのか、つまり汚水や雨水がどう流れていくのか一目でわかります。各の管の太さや施工年度、傾斜等もわかります。片瀬山全体の多くの下水道は昭和47年(1972年)と書かれており、すでに50年経過している事がわかります。さて、ここからどのようにして処理場までつながっているのでしょうか?

「施工年度」は片瀬山の場合、三井から藤沢市に管理移管された年度(昭和47年が多くを占める)が記されています。管底高(標高m)から傾斜の向きがわかります。もちろん高い方が上流です。傾斜は‰(1kmでの傾斜m)で表示されています。片瀬山内のある地域の下水道台帳に一部追記(青枠・青字は追記)

以上を調べた上で、ここからは、藤沢市役所の下水道局総務課に伺って、お話を聞きました。丁寧にご対応いただいたのはFさんとMさんです。ありがとうございました。

片瀬山の雨水管の水はどこへ?~主に境川に流れ込む
Q:片瀬山の下水道ですが、集まった汚水と雨水はどこに流れていくのでしょうか?
A:まず雨水ですが、片瀬山の北部と中央部の雨水は雨水管で集められて、新屋敷橋のたもとの雨水の放流口から境川に流れ込みます。また南部の雨水は同様に湘南白百合学園正門横で湘南白百合の敷地沿いに流れる水路に放流されています。これも最終的には境川に合流します。(下図参照:下水道台帳を縮尺を小さくして表示したもの)

「下水道台帳」を縮尺を小さくして表示したものに「放流口」「藤が谷ポンプ場」を追記したもの

Q:雨水は雨が降ると一気に増えるので、だいぶ太い管ですよね?
A:はい、片瀬山の大坂の所にあるものでは700㎜の太さがあります。住宅地内は250㎜くらいですが、放流口近くでは太くする必要があります。強い雨が降るとここから沢山の水が放流されます。

大坂下新屋敷橋下の雨水放流口 雨天で雨水が放流されている所 2022.12.22撮影
白百合学園入口門横の雨水放流口付近 晴れてほとんど排水されていない時

片瀬山の汚水はどこへ?~藤が谷ポンプ場等を経由して辻堂浄化センターまで

境川側から撮影した藤が谷ポンプ場

Q:では汚水はどこに行くのでしょうか?
A:汚水は境川の反対側にある藤が谷ポンプ場に行きます(上図参照)。汚水管は汚水だけがいつも同じ調子で流れるので、細い管で大丈夫で、片瀬山ではだいたい200~250㎜程度の太さになっています。この後、下藤が谷、浜見山のポンプ場を経て、辻堂浄化センターに行って処理されて汚れは汚泥として焼却され、残りの水分はきれいになって海に放出されます。

Q:この地図では片瀬山は汚水管と雨水管の青と赤があるので、それが混ざって表示されているのですが、鵠沼の方は緑色一色なのですが、どう違うのですか?
合流式と分流式の違い 先進的だった片瀬山の分流式下水道
A:実はこの緑色は「合流管」と言って、雨水と汚水を同じ太い管で流す下水道方式(合流式)の管なのです。下水道の整備が始まった当初はこうした方式から始まったので、それが残っているわけです。藤沢市全体の下水道で見ると、鵠沼、片瀬、辻堂等南部地域はこの合流式が残っていて、市内の他の地域は分流式です。

市全域の「下水道台帳」を表示した図 緑エリアが合流式 青赤エリアが分流式エリアを示す

この合流式下水道では下水処理場・ポンプ場に汚水と一緒に一定量の雨水が流れこみ 処理しますが、それ以上の雨水は、未処理のまま川や海に放流することになります。ですから水質汚染対策上は分流式の方がよいのですが、建設費がかさみます。早くから下水道整備が進んだ地域(藤沢市中心部、鵠沼、片瀬、辻堂など)は合流式でスタートし、これら地域からの汚水・雨水を処理する辻堂の処理場もそれを前提に作られています。今は全国的に、新しく作る下水道は「分流式」になっていて、藤沢市でも後から作った地域は分流式になっています。

Q:すると、片瀬山はせっかく分流式で汚水と雨水を分けて集めているのに、その先の辻堂の処理場は合流式なのですか?
A:はい、そうなんです。下図は藤沢市の下水道を最終的にどこの処理場で分担しているのかを示す地図です。辻堂浄化センターは片瀬山を含む藤沢市南部と湘南ライフタウンまでの地域、それ以外の多くは大清水浄化センター、市北西部は茅ヶ崎市柳島の処理場で処理しています。上の図と見比べると分かりますが、片瀬山、湘南ライフタウン、SST(パナソニック跡地の住宅地)は分流で集めていますが、辻堂浄化センターで他の合流式の地域と一緒に処理しています。

パンフレット「ふじさわの下水道」より 片瀬山の汚水は藤が谷ポンプ場→下藤が谷ポンプ場→浜見山ポンプ場を経由して辻堂浄化センターに届く ここでは藤沢市南部の22万人分の汚水処理をしている

Q:東京オリンピックで東京湾の会場が大雨の後、規準を超える汚れが問題になったというのはこの合流式が原因だった記憶がありますが?
A:その通りです。
Q:でしたら、合流式の所を今から分流式にはできないのでしょうか?
A:南部地域は昭和30年頃から下水道整備に着手したのですが、道が狭く色々な管がすでに埋設されていて、新たに道路に下水管を通すのは今となっては難しいのが現状です。

そのかわり対策として、貯留管(上の地図で太線で表示)を作って一時的に水を溜め、大雨が降った時に洪水を防ぎ、あわせて川や海に流す汚水を減らす対策をしています。片瀬山は他の地域がまだ合流式だった頃に造成の時から分流式だったので先進的と言えます。

鵠沼東部1号貯留管工事(藤沢市下水道ビジョンより)

浄化センターにやってきた汚水はどう処理されるのか
Q:浄化センターでは水をきれいにして、汚れは汚泥として取り除くという事ですが、それはその後どうするのですか?
A:汚水(辻堂では雨水含む)はポンプ場を経て、まず砂を沈殿させ、固形物の沈殿と微生物による浄化を組み合わせて汚泥として取り除き、きれいにして川や海に放流されます。汚泥は乾燥させて焼却し、建築資材としてすべて再利用します。

冊子「ふじさわの下水道」の図から作成 

Q:基本的な事がよくわかりました。わかりやすく説明して頂きありがとうございます。
A:できるだけ多くの方々に知って頂きたく、見学会等も行っておりますので、機会を見つけてぜひご参加下さい。

次回は、50年たって、設備の老朽化に心配はないのか?災害時はどうなるのか?についてです。