【調べてみた】防犯灯 その仕組みと驚きの歴史 その2

防犯灯管理 知るとびっくり 複雑さを割り切りで運用している

多くの方は夜道を明るくしてくれている照明は重要な公共サービスとして市が管理して費用を負担していると思っているのではないでしょうか?実はそんな簡単な話ではないのです。今回は字が多くてすいません。今からお詫びしておきます。

そのあたりの詳しい説明や具体的な手続きを記したガイドブックが毎年6月末に各自治会に送られてきます。それが「防犯灯マニュアル」です。(→2024年版はこちら)52ページもある大部なものです。市のWebサイトでも見る事ができて、毎年改訂されます。発行は藤沢市防犯連合協議会という市の関連団体になっています。ここでは第1ページに防犯灯について
自治会・町内会等が設置、維持管理しています。市では、これらの防犯灯の設置費や補修費、電気料に対する補助事業を行っています。」と書いてあります。本来自治会の仕事なんだけど費用も負担し、様々な手続きを代行してあげていますから普段の管理を自治会・町内会がやって下さい、という内容を上から目線にならないように細心の注意を払って説明しているのがこのマニュアルなのです。

防犯灯マニュアルの表紙 2024年版

このマニュアルによれば、自治会・町内会が普段の防犯灯の管理についてすべき3つの事として、
1防犯灯を点検し、必要なら指定の電気工事会社に補修を依頼する。
移設・撤去等の対応
防犯灯台帳の整備 
が挙げられています。これ以外の手数のかかる事は藤沢市防犯連合協議会がやってくれます。 
ちなみに、この協議会が代行してくれている防犯灯1個それぞれに発生する手続きは、道路占有許可、電柱所有者(東電やNTTなど)への図面付申請、設備の瑕疵による事故の保険手続き等で、これらについても丁寧な説明があります。夜道を明るくするためにはひっそりと大量の書類が必要なのでした。以下「自治会のやるべき3つの事」を少し詳しく説明します。
1及び2 不都合がないか点検し対応する
〇機器の不良:球切れや不点灯、昼間の点灯
〇機器の設置状況:柱が倒れたり傾いている、防犯灯の向きが不良
〇配線状況:架線が垂れ下がっている
 →上記のような場合は指定工事会社に依頼して工事
〇周囲の環境:例 樹木の枝葉等で隠れている
 →土地所有者や道路管理者(街路樹の場合)に剪定依頼や移設を検討
〇管理上の対策が必要なもの:例 すぐ近くに別の照明があり意味がない
 →移設や撤去を検討
これらに基づいて、自治会員の皆様には不具合を見つけたら、自治会防犯担当役員に場所を知らせて下さいとお願いしているわけです。この場合も指定工事会社への依頼となります。
これらの様々な条件下での申請書式や補助金でカバーできる費用についての取り決めがこのガイドブックの多くを占めています。逆に補助金でカバーできない(例:規定より明るくする等)場合はすべて自治会・町内会負担になります。
3防犯灯台帳の整備
これが大変です。防犯灯の設置位置や、管理番号(自分たちで決める)を記載した台帳(書式も決まっている)を用意し、電柱や専用柱に管理番号のシールを貼るのだそうです。確かにその1で記した依頼書類には電柱の番号や防犯灯の種別に至るまで素人では書けない情報ばかりの書式になっています。ガイドブックには電柱の番号の見方や所有者(東電/NTT/藤沢市)の見分け方も書いてあります。勉強になります。しかし、正直なところこんな難しい記入をできる一般の人がいるのでしょうか?
今回調査を実施した自治会では指定書式の台帳の代わりに地図を作って自分たちでわかる範囲での確認をしたのですが、ランプの種類はわかりませんし、シール貼りまではとても手がまわりませんでした。自治会・町内会の管理 と言う建付けを守るためのものでしょうが、現場での運用は非常に困難なのです。

工事会社に聞いてみた
今回の書類の内容確認に端を発して調査をした事をお伝えして、他の自治会さんがどうしておられるのかを聞いてみました。
・ほとんどの自治会さんでは場所の情報だけで工事の依頼を頂いて工事しています。
・中にはちゃんとした管理簿をお持ちできちんとしたご依頼を頂く自治会もありますが・・
・工事会社のほうで、工事実施後申請書類に必要な情報を記入した情報を市にお渡しして、申請書類の形に市(防犯協会?)から自治会長さんに渡しするようになっています。

防犯灯管理シール貼りを実行している片瀬山内の丁目があるか調べてみた
防犯灯台帳の整備が実際に行われているかどうかは管理シールが貼られているかを見ればすぐわかるので、片瀬山の全丁目の防犯灯をざっと調べてみました。すると・・・ある丁目で過去に実行したらしい所がある事が判明しました。

やっておられる所があるわけなので、脱帽です。他の4つの丁目では管理シールは確認できませんでした。

今の現場の運用は良くできていることが分かった
というわけで、現状代々の防犯担当に伝えられている「場所情報で工事を依頼して、工事会社の情報を元に誰かが作成してくれた書類に自治会長がサインをすればよい」という運用になったのが良く理解できました。防犯灯が故障した時に、「防犯灯には種類があって・・」「台帳に基づいて」と理解してから申請書を出して市の承認をもらって発注して工事を・・というのでは犯罪予防には役立ちませんものね。

自治会が解散した時は大変な事になる
このマニュアルにはもう一つ気になるQ&Aがありました。
Q.自治会・町内会等を解散する予定ですが防犯灯はどうすればよいですか。
A.自治会・町内会等を解散する前に、自治会・町内会等内で十分に検討した上で、市防犯交通安全課にご相談をお願いします。以下3とおりの方法が考えられます。
ア 近隣の自治会・町内会等に防犯灯を移管する。
イ 防犯灯を管理する組織を設立し移管する。
ウ (ア、イの対応が難しい場合は)防犯灯を撤去する。
こんな事が起こったら大変です。片瀬山ではそんな事は考えられないのですが、自治会加入率の低下が問題になっている地域があると聞いており、これは地域社会の生活にそれこそ大きな影を及ぼします。実際、商店会の解散に伴う街灯撤去になりそうになった案件が過去に市議会で何回か取り上げられています。(例 平成22年3月9日予算等特別委員会議事録 井上議員の質問とそれに対する答弁)
自治会・町内会が防犯灯を管理する と言う建前は実は藤沢市だけでなく、全国の自治体で営々と守り続けられているものなのです。市民が通報して市が業者さんに依頼すれば簡単なのに、どうしてここまで大変な手間をかけているのでしょうか?不思議ですね。それは次回です。