HUGの体験導入で避難所開設時を実感してみる
6月1日日曜日片瀬中学に片瀬山の自治会役員と民生委員・防災ボランティアメンバー等約80人と片中の避難所開設を担当する市職員や片瀬センター職員の皆さん十数名の方々が集まり、避難所開設訓練を行いました。

大災害発生時、片瀬山の自治会の役員の皆さんは、まず自分たちの家族の安否確認や身の安全を確保した上で、片瀬中学での避難所開設サポートを行なうことになっています。
従来は最初に被災地での住民の活動のビデオ上映等があり、職務分担班ごとにマニュアルを説明してもらい、質疑をしながら理解して、実際の場所(たとえば物資置き場)で確認する という訓練でした。
今年は内容を一新して、HUG(避難所運営ゲーム Hinajyo Unei Game)を全員で30分ほど体験し、その後に現場確認をおこないました。従来は自分の班についてだけだったのを、他の班の分も体験できるようになりました。マニュアルの説明は秋の回に回して行うことになりました。
HUGの体験
HUGというのは避難所でおこるさまざまなできごとにどう対処するのかを疑似体験できるシミュレーションゲームです。様々な背景を持つ避難者にどう対処するか?、つぎつぎと起きるできごと・アクシデントに即断即決で具体的な対処を迫られます。正解はありませんが、避難所ではそこにたまたま集まった人たちで助けあいながら進まないといけない事が実感できます。(具体的な内容はネタバレになるので詳しくは記しません)

八つの班のそれぞれで同時並行でHUGを実施したのですが、各班を回ってみると、初めは勝手がよくわからなかったけれども、だんだんリーダー的な役割の人が明らかになって来て、さらに色々な視点からの意見も出るようになり、チームとしてそれぞれが機能し始めていくことがわかり、とても頼もしく思えました。おそらく、実際の場面でも、その日その時その場にいたメンバーでやるしかない状況を再現しているから、シミュレーションが成り立つのだろうと思いました。
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続いて全員が4グループに分かれて、現場体験・見学を行いました。4つの場所を順に回って全過程を体験しました。
①段ボールベッド組立+パテーション組立


段ボールベッドは片瀬中学には備蓄がなく(備蓄場所がないため)、業者さんと協定を結んでいて3日以内に届くそうです。一日も早く備蓄場所の確保を願う次第です。
パテーションは4、5セットは備蓄倉庫に備蓄してあるそうです。
②ペール缶トイレ(携帯トイレ)の使い方
避難所でもご自宅での在宅避難の場合でも断水・下水使用不可の環境かでは切実な課題はトイレです。。最近では多くのご家庭でも携帯用トイレ(ビニール袋を使ったもの)を備蓄されている方もおられると思いますが、いざという時のためには体験しておく事が大事です。今回はペール缶や段ボール製簡易トイレでの携帯用トイレ使用の体験でした。携帯用トイレは片瀬中学の備蓄倉庫に備蓄があり、テントやペール缶も15セットそこに用意されています。

③発電機起動+投光器を使ってみる
夜になると片瀬中学等の大規模な施設では照明は懐中電灯だけではどうにもなりません。また後で述べるマンホールトイレの排水とか、夏の扇風機とか、通信機器等どうしても電力が必要になります。そうした電力供給に必要な発電機が用意されています。その起動をやってみる という訓練です。

④マンホールトイレの設置方法
片瀬中学のテニスコート横の奥にマンホールのふたがいくつか並んでいます。その蓋を専用工具で開けることができ、その上に専用便座をおく事で直結のトイレを設置する事ができます。便座も備蓄倉庫にあります。かなり大量の汚水を溜めることができ、あとからバキュームカーで排出するものです。雨が降って、万一マンホールの中に水が溜まってしまった場合は、排水ポンプで下水(雨水)に流すことができます。


災害時は備蓄が命をつなぐ
これらの体験見学する途中で校内の防災備蓄倉庫を通るので、中を見る事ができました。毛布とゴザが半分近くの場所を占め、その他にトイレ関係や扇風機、浄水のための濾過装置等があります。特筆すべきは、食料の類はごくわずかしか備蓄されていません。避難してくる人たちは、外から支援物資として水や食料が届くまでは、自分たちで持参したもので生きていく必要があるという事です。
津波・浸水・家屋倒壊・火災の被害やその不安を感じる方はどなたでも、片瀬中学に避難をできるのですが、その場合も、可能ならば自宅から食料や水を持参するのが良いと思った次第です。
自宅での在宅避難を選ぶ方も、外部からの物資が十分に供給されるようになるまでは、片瀬中学からの食料供給を期待する事はできませんので、できる限りの水・食料・トイレ・医薬品等それぞれに必要な備蓄を1週間分自宅に持つことが必須である事は、改めて強く感じました。
参加した皆さんの感想からいくつかをご紹介
〇HUGについての感想
・実際の避難所で起きる事について今まではイメージが湧かなかったが、これで多少理解できた気がする。
・他の丁目や市職員の方と直接交流できてよかった。
・実際にはもっと混乱した中なので、こんなものではないかもしれませんが、考える良い機会になったと思います。
・HUGの開始前に事前に学校内等の見学を先にやっておいた方が良いのでは?
・この方式で続けて少しでも疑似的な体験者を増やしていくのが良い。
・今後は事前情報の提供や説明のやり方についてのもうひとつ工夫が必要
・事前取り決めは限界があり、各個人の判断に委ねられることが多い事がわかった
〇現場体験についての感想
・今回のように担当班以外の全部の現場を一通り見て回るのはとても良い
・炊き出し等も実際におこなってみると課題の洗い出しに役立つのでは?
〇訓練全体について
・実際に即した知識や体験ができてとても役立つものだった
・ぜひ各世帯一人の参加経験があるようにするべき
・日程お知らせが直前だったので、もう少し早く連絡欲しい
・片瀬の人たちも一緒に参加してもらうと良い
・避難所運営に自治会が携わらなければいけないことについての解説等が欲しい

レポーター(私)の感想
今回のような全く新しい取り組みを企画した皆さんの努力と勇気に拍手!と思いました。
とかく「訓練」というのは「つつがなく訓練が終わること」に力が注がれてしまい、それでは実際の災害現場の「どうしよう!」「何とかしなきゃ!」を再現できません。今回、その雰囲気を作りだした中で「参加者が想像力を働かせる 訓練」をすることが、本当の備えになるのだと思いました。次回以降もやり方を改善した上で、こうした体験者を増やしていってほしいと思いました。
(Reported By S)