【調べてみた】藤沢市の人口動態に大きな変化?

一時的な減少でない可能性があるのでは?

例年春に、総務省統計局のサイトに各市の前年の人口動態データが公開されていました。それをもとに藤沢市の人口動向について毎年記事を記してきました。しかし、今年はレポートの発表もなく、生データだけが例年よりだいぶ遅れて統計局のホームページの中でひっそりと公開されました。このためメディアによる紹介もありませんでした。
そんなわけで、今頃になってしまいましたが、少し長期視点での記事を記してみましょう。
注目したのは、
・自然増/減と社会増/減の長期的な推移
  そして
・ここ数年傾向が大きく変わり人口減少に突入し始めたのでは?
 を示したいと思います。
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まず、Netニュースなどで多くみられるのが、
「藤沢市は住みよくて、社会増(=転入者による人口増加)が多く人口が増えている。」
というニュースやイメージです。
確かに、藤沢市は神奈川県内でも人口の社会増が多い都市です。
今回の統計でも2024年1年間での社会増は
横浜市 10805
川崎市  6461
相模原市 2268 という政令指定都市に続き
藤沢市  1514 と第4位につけています。
そして平塚市1439,海老名市1410、大和市1228、茅ケ崎市734と続きます。
ところが・・・

〇実は藤沢市は2023年、2024年と総人口は減少している
下記に示すように片瀬山ができた約50年前は藤沢市の人口増加は1万人/年を超えていましたが、少しずつ増加にブレーキがかかっていました。最近は2-4000人/年程度の増加で推移し、2020年、2021年はコロナで転入者も増え、人口は安定増加すると思われました。ところが2023年、2024年にストンと総人口の増加が止まり、人口減少に転じてしまいました。これが一時的なものなのか?もう少し様子を見ないといけません。

総人口の増加=社会増/減+自然増/減 ですので、まず社会増/減の様子をもう少し詳しく見てみましょう。社会増/減は転入・転出で決まります。

〇常に社会増が大きかった藤沢
藤沢市の転入者と転出者の数を記したものがこのグラフです。過去五十年にわたり、どちらも1.6万人から2.5万人くらいのレベルで推移しており、いつの時代もほとんど転入者が転出者を上回っています。つまり社会増/減は常にプラスでした。
社会増が一番多かったのは1970年の約6500人、その次に多いのが2021年の約4500人です。

2018年以降くらいから社会増は安定的に増加して、藤沢市は社会増が多い街として知られるようになりました。

総務省 2021年住民基本台帳人口移動報告

特に新型コロナの時期には多くの方が東京横浜からの転入者が多かったとみられます。
特に2021年には全国の市町村の中で8位となり、川崎市をも上回る社会増(転入超過者数)となりました。

2024年の移動者の急増および2023年2024年の差の減少の理由はまだわからない

コロナ終息のころ2023年から一気に傾向が変化
この傾向は2022年まで続いたのですが、2023年に一気に状況がかわりました。転入・転出の差が減り、2024年には転入者も転出者も急増してその差が少ない という大きな傾向変化がありました。これが今後どうなるかは大いに注目する必要があると思います。
コロナ前後で社会増を可視化した地図がありましたので、それをご紹介しましょう。転入ー転出=転入超過数としてその人口比で地図を色分けしたものです。
コロナのころ(2021年ころ)は都心部から周辺(例えば湘南地方や多摩地方)への転出が増えたものの、コロナ禍終息とともに、元に戻ったことが読み取れます。
ただ、藤沢市の場合は2024年には転入・転出とも過去最高レベルを記録しているので、そんな単純な話ではないだろうと思われますが、他に比べれば多いもののコロナ期に着実に増加した社会増はこの2年で急ブレーキがかかり低迷したと言えます。

浜銀総合研究所 HRIテーマレポート36号 2025年8月
コロナ禍が落ち着き東京区部の転入超過率が再び上昇

〇自然増/減 50年前は社会増より自然増が多い若い都市だった
では、自然増減はどんな傾向を示しているのでしょうか?
1970年代は出生数が死亡数を大幅に上回り、とても若い街だったことがわかります。しかしここ10年くらいに出生数と死亡数が逆転し自然減が急増しています。(次のグラフ)
その結果、社会増は決して少なくないのですがそれでも、自然減を埋められなくなっていることがわかります。今回は、社会増の数がここ2年間低迷したために、一気に全体の人口減となったものと思います。(次の次のグラフ)

自然減が急速に増えている
社会増がこの2年低迷して、増加する自然減を埋められなくなり、総人口は減少に転じたことがわかる

この2年の社会増の減少の原因はまだよくわからないのですが、これまでのグラフを見て、自然減の急速な上昇を考えれば、それを上回る社会増をコンスタントに確保するのは容易でないことがわかります。
藤沢市の人口予測では2030年にピークを迎えるという予測だったのですが、それより早まってしまったのではないか と思えます。ここしばらくの傾向に注意が必要です。市当局の見解もお聞きしたいところですね。(Reported By S)