境川と海岸にはさまれて短時間での避難が困難な地域の砦として
7月26日土曜日片瀬海岸三丁目にできた「津波避難タワー」の地元住民に対する内覧会(10:30-11:00)というのが開催され、行ってきました(→神奈川新聞記事はこちら)。場所は海岸近くの住宅街の真ん中です。「避難タワー」ということでしたが、大きめの駐車場という感じです。

海岸側からは西浜歩道橋(円周形)の交差点を入って、小田急踏切を渡って三つ目の交差点を左に行った所です。

周囲にあわせて再生木ルーバー等色調も配慮されていると感じました。
大まかに言うと、2階建ての2階屋上が避難床として使われ、そこに津波避難の人たちを収容するようになっています。そして、屋根のある2階部分がトイレや倉庫や津波が去った後の避難場所になっています。1階には柱が立っているだけで何もありません。(以下図面類は「工事説明会の説明資料」より 一部説明を編集部付記)


説明用の簡単な1枚チラシをもらったのですが、特に集まっての説明等はなく、ご自由にご覧ください というものでした。ということで、早速のぼってみました。
◆スロープで屋上までのぼってみる(高齢者ルート)
では1階からスロープで上ってみましょう。何回か折り返しがありますが、スロープだけで屋上まで行けるようになっています。

◆階段で屋上までのぼってみる(健常者ルート)

◆屋上は広々
440㎡(133坪)の広さがあります。収容人員はこうした施設の基準0.6㎡/一人から計算して、733人とのことです。


◆2階(津波後の避難床及び倉庫・トイレ等)
ここで2階に戻ってみます。倉庫は備蓄や資材を置いておく場所です。残り半分は一時避難場所になります。ただここは大津波では水没する可能性があり、津波後に屋根のある避難が可能という位置付けと思います。多機能トイレが1か所しかない ということも言えますが、水没の可能性から、主力は組立式トイレという形になっているものと思います。


コンセントに電力供給。今後蓄電池も設置予定
◆1階入口は普段は鍵がかかっている
防犯上の必要から、平時は入口に鍵がかけられてます。非常時は写真のように白いボード部分を壊して、内鍵を回して扉を開けて入る ということになっています。

スロープ・階段のそれぞれの1階入口にこの鍵がある
◆レポーターの感想と補足説明
今回は複数のレポーターによる報告がありましたので、それぞれの感想を記し、編集部で後から調べた補足説明を付記します。
●レポーターM
住宅地、それも両側に海と境川があってはさまれた場所の避難タワーということで、周囲との間で色々な制限があるなかで作られたのだろうと思います。たとえば海からの津波と境川からの浸水の両方を考えて高さや屋上の広さも決め、さらに周囲から目立たない色調や植栽等の配慮もされています。こうした施設を生かすには、地域で繰り返し避難訓練等が重要になると思います。
東北の震災を仙台で経験した者としては、躯体の柱が少し細いように感じました。流されてくる住宅等を受け止める必要があり、若干不安があります。
また、ガソリン発電機がありましたが、津波で停電している中うまく避難できれば良いと感じました。
【補足説明】第7回住民説明会で使用された図を見つけましたので、貼っておきます。(当日もパネル説明があったらしい)
図の上半分が避難タワーの場所を含む地図で、左側が海岸方向、右側が境川方向です。下半分がその直線上に想定される津波の水位の図です。水位想定は県が決めた最大水深の津波(相模トラフ沿いの海溝型地震M8.7 (西側モデル))で、海からの津波では建物等の影響で水位がせりあがる現象や、境川側からの浸水も考慮に入れた水位も考慮しているそうです。海岸において第1波到達するまで6分、最大波到達まで12分と想定されています。
また、地元の自治会ではこの施設を利用する避難訓練が予定されているそうです。

●レポーターT
スロープの配慮もあり、また周辺にマッチした建物であり、避難タワーとしてはよくできた施設だと思います。逆に目立たないものだったので、結構うろうろしてしまいました。その分周囲への看板掲示や案内等もっとしても良いように感じました。
海岸側にも何も表示がなく、観光客は気づきようがないように思います。
【補足説明】この施設は「(短時間での)避難困難地域であるこの地域住民の緊急避難場所」という目的で作られているのだそうです。再び第7回住民説明会の資料を貼っておきます。下図の指定地域内の人を短時間に収容できる事を目的にしていることが説明されています。海岸側に看板等が見当たらなかったのはこのためと思われます。

海岸の観光客の避難場所対策については、別の施策が必要だと思いますが、課題山積のようです。(こちらの記事)
今回の津波避難施設の一連の説明会について、その質疑を含めて詳しく資料が公開されています。動画説明は分かりやすいです。これらは本記事の補足資料をまとめるにあたり、参考にしました。多くの制約の中で関係者の方々の知恵と努力があったことが分かりました。
〇原稿確定後7月30日に津波警報が出て、約150人の方に利用されたという情報が届いています。炎天の屋上は避け、屋根のある2階に避難したそうです。
(Reported By Ms & Ts & S)