【MINI取材】1丁目三角地に宅地造成中-2 案

「あとは各戸を購入した方の責任です」

前回は平地がわずかで急斜面を含む土地を5区画に分割して宅地として造成するという話がどのように進んだかをご紹介しました。ここからは近隣の住民の皆さんにインタビューを行った内容を加えて、住民の皆さんの不安の内容をご紹介します。

平らな部分と傾斜地の割合がわかりやすい2024年のGoogleEarthの写真 従来この場所が「三角地」と言われるのがよくわかります。平地面が薄い緑、傾斜面が濃い緑になっています

この土地は最近転売を経て今回の開発業者の手に渡った
・Aさん 「この土地は元は藤沢市北部に住むある方が50年前に入手したのですが、その方が時々いらして草刈りしていたので声をかけた際に、斜面の草刈りを条件に上の平らな部分の土地を借りて畑として使ってよいことになったのです。」
「その方が亡くなられて昨年相続となり、売却されて不動産屋さんの間で転売がされました」
「散歩で通りがかった方からは、私が地主だと思われていたみたいだね」
→登記簿を調べてみました
約50年持っておられた方から昨年1月に相続となり、昨年10月に手放されてから今回の開発業者の手に渡る令和7年初めまでに3社の不動産会社の手を渡っています。

この斜面を含む土地は盛土でできた場所
・Bさん「このあたりの土地については、三井不動産が片瀬山を造成した時にこの傾斜地付近には造成時に出たガラも含めて多くの土砂で埋め立てたと父から聞きました。だからそうした地盤の傾斜地に建物が建つとは思っていませんでした」
→調べてみました
藤沢市のホームページで公開されている「大規模盛土造成地マップ」というものがあります。全国で盛土造成地での地震被害が多発したところから、大規模な盛土造成地の把握と公開を進めるために、国が過去の地形図との比較方法のガイドラインを示し、それに従って全国の自治体が公開しているものです。確かに今回の土地は盛土でできていることが推定できます。

藤沢市大規模盛土造成地マップトップページはこちら
片瀬地区を含むマップのPDFデータはこちら
このマップの盛土造成地だから危険とそのまま判断はできず、あくまでも防災についての住民の注意喚起であり、建築規制などが必要にはならない との注意書きがあります。


実際に工事中、いろいろなものが出てきた
工事の途中でこの造成地の斜面からはいろいろなものが出てきたそうです。これらは片瀬山を造成した時に出たいわゆる「ガラ」を谷の埋め立てに使ったものが土中に埋まっていたと思われます。またこうしたガラが転がって下の道路に落ちてくることもあり、工事担当の方がすぐ撤去しました。やはり地盤についての不安はぬぐえないと思います。

斜面部分から出土した巨大な土管 10月29日 ご近所の方提供
同 大きなコンクリートの塊 10月29日 同

2回の説明会で明らかになった開発会社の基本方針
6月15日と7月6日に説明会がありましたが、その時の応答について、皆さんの不満は以下です。
Cさん 「こんな地盤が弱い斜面を宅地にすることができるのか?ということなんだよ。実際に今の前の所有業者はボーリング調査をしたうえで、彼らはやめたんだ。今の業者はその結果を引き継いだはずなんだよ。それを購入者に説明しない と言うんだ。それは購入者が調査すべきことだと。」
Dさん 「今回の宅造業者は造成だけやって、後は家を建てる施主さんの責任とばかり言うんだ。とにかく急いでいる感じなんだけど、最終的な建築も含めてちゃんと、安全にしてほしい」
Eさん 「現在すでに正式ではないにしても紹介する活動に入っているようで、価格についてもかなり高額な金額が聞こえています。購入した人は安全について大きな責任を背負うことになるので、そのためにかなりの追加費用が必要になるはずです。それを知らずに購入してしまう人がいないか心配」

話を聞いていて、驚いてしまいました。
2回分の議事録がや回答書が残っているので、その応答から抜粋しました。
(すでに9月に特定開発許可が下りたので、その内容についての質疑を除きます)

説明会での宅地造成した開発業者H社との質疑抜粋(住民側Q 開発業者A)
Q:H社は実際の建物を建てる人ではなく、土地を売ってしまった後は知らない ということですね?
A:土地を買った方が建物を建て施主となり責任をもって家を建てるようになります。
Q:5軒が別々に工事を行うことはそれぞれでばらつきが生じて危険ではないか?
A:建物は買った方が建て、個々の責任となります。
Q:擁壁の費用負担はだれか?
A:(土地)購入者です。
Q:事業者が建築までやって売るのなら、まだ納得できるが、なぜ途中の土地だけで売ってしまうのか?
A:当社の建物ではこういう土地に対して技術的に乏しい。また土地での要望が多くあり、土地売買に決めました。
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Q:ボーリング業者に話を聞いたら、宅地をできるところではないと言っていた。
 その情報は引き継いだのか?どうとらえているのか?自社で改めて実施の予定はないのか?
A:引き継ぎました。表層は盛土のため軟弱だと捉えています。(改めて調査を)自社で行う予定はございません。各宅地での建築の際は、その設計を行う会社が自ら調査し、法的に問題がない状態において建築確認を取得すると思います。
Q:ガラが出た調査データを購入者に説明するのか?
A:見せても信用しないと思います。自らで調査をして建築確認をとるのか一般的です。
Q:各戸の1区画あたりの地盤改良費はいくらくらいを想定していますか?
A:当方で地盤改良を行う予定はないので計算していません。
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Q:集合住宅にするのではないか?集合住宅を建てる人を止められるのか?
A:専用住宅5戸になります。そもそも集合住宅を建てようという方には売りません。
  ただ、契約上用途や階数を取り決めることはできます。
Q:この場所は眺望の点でも周辺住民の思い入れの強い場所。花火も見る場所。
  上を擁壁で固めて下の面で建物の計画をしてほしい。(眺望の維持、安全性から)
A:購入された方の判断になります。
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上記をまとめると、以下のようになります。
〇土地を売って、その後の土地の安全性への確認や配慮・擁壁・建築確認・隣家との調整含めてすべて購入者の責任
〇ボーリング調査結果は見たが、当社では改めては実施しない。土地購入者は自ら調査して判断し、建築確認を取得するもの
〇あくまで専用住宅五戸用の土地として販売する。下の道から出入りする形の宅地化はしない。

見晴らしの丘 三角地からの夕景 2025年9月 相模湾の湾曲と富士山が美しいです 家が隙間なく建てられると
この景色は道路からは従来のようには見えなくなる可能性が高いです

眺望で知られたこの場所で土地を購入して景色を独占して見られるなら少々お高くても、という方がおられるのかもしれません。しかし家屋を建てる方が安全性確保の責任をすべて背負うことになります。万一事故などが起きようものなら、周辺の方も被害にあい、その方も傷付き、片瀬山のブランドにも傷が付き、誰も良いことがありません。せめて関係される皆さんがそのリスクをきちんと知って必要な費用を負担して対応されることを祈るものです。
現地の周囲に掲示された「ここが空き地だった50年には理由があります」は単なる「抗議」ではなく、順々と続く説明は現地を見に来た購入検討者の方に正しい判断をしてほしいという願いであるからだということがよくわかりました。
次回は専門家の目でのリスクの検証をお知らせしたいと思います。