【MINI取材】1丁目三角地に宅地造成中-案3

建築専門家「この場所に安全な家を建ててもらうために・・」

第1回では問題になっている土地がどんなところなのか、第2回では周辺住民の不安について取り上げました。
今回第3回では、その不安を除き安全な家を実現できるのか?できるなら合理的な費用の範囲でどんな方法があるのか?
有識者として建築の専門家お二人に現地を見ていただき経緯も知っていただいた上で、客観的なご意見を伺いました。その内容をご紹介します。

見晴らしの丘富士山夕景 2023年1月 冬は晴れるので毎日のようにこうした夕景が見える 飛行機雲も見える


お二人は建築士の経験40年と20年のベテラン建築士の方で、数多くの現場を経験されています。以下こちらからの質問はQ、建築士の方々のお答えをAと記します。
ただし、以下は外見や限られた情報からの一般的な見解ですから、間違いがある可能性はご承知ください。
家を購入した方が行う手続きについて
Q:これから土地を購入して家を建てようとする方にはどのような手続きが必要なのでしょうか?
A:この後、おそらく開発許可についての完成検査があり、それを通過すれば土地の販売が可能になります。そこで区画を購入された方はそれぞれの家の設計に基づいて建築開始前に藤沢市に建築確認申請をして許可を取る必要があります。これが関門になります。

傾斜地に作る基礎は支持層まで届く杭で支える必要がある

Q:今回の土地の場合、何が審査のポイントになるのでしょうか?
A:今回は5つの区画に分割されています。おそらくNo1、No2の土地くらいまではぎりぎり平たんな土地部分に家を建てることは可能かと思われますが、No3以降の方は平たんな場所が少なくて、普通の家を建てようとすると大きな柱が斜面上に張り出す形にならざるを得なくなると思います。清水寺みたいな感じです。
するとその柱を支える地盤が問題になります。斜面の土にはそれを支える力がありません。

以前の業者のボーリング調査結果があり、ガラを含む盛土地盤であるらしいので、その下の固い支持層まで深い杭を打つ必要があって、柱と合わせて合計15m程度になると思われます。これは膨大な費用が必要になります。また家の下の空間も利用しにくいです。
Q:斜面に擁壁は必要ではないのですか?
A:杭がしっかりしていれば30°以下の斜面なら擁壁はいりません。ただ、地質により土砂が流れない安定する角度は異なるのですが、土留の検討は必要になると思われます。

斜面に柱を張り出す方式の建て方

安全面費用面での現実的な道路沿い斜面での家の建て方
Q:もう少し現実的な案はないのでしょうか?
A:我々二人とも同じ意見なのですが、鎌倉山などの道路沿いの急傾斜地でよく行われる方法があります。

道路沿いの狭い平地は車庫にして、道路沿いの斜面を削って防水対策をきちんとした鉄筋コンクリートで壁面を作り、そこに地下1階と1階部分を作ります。そうすると柱部分が露出せず、さらに支持層までの杭もずっと短くなります。
そして道路面からの建物の高さは1階部分になるので、周辺地域への景観影響も少なくなります。

斜面を一部削って建てるやり方 安全性や費用からも現実的な方法と思われる

鎌倉山でのカフェなどでわかりやすい事例があります。鎌倉山での有名な建物の例です。

道路沿いは車庫を置き、斜面を削って
2階建てのカフェを作っている例(GoogleEarth)

五区画に区切られ、区画間の調整が必要
Q:なるほど確かに名案だと思います。傾斜面に杭を何本も打って安定した基礎を作るよりはリーズナブルな気がします。
A:しかし確かにそうなのですが、今回は5つの区画に区切ってあるので、それぞれの区画で家を建てる方々が協議する必要性が発生してしまうのです。
平地に家を建てられる区画の方と、傾斜面を削って家を建てる方の境目にどうしても段差が発生し、そこで擁壁が必要になってしまいます。

その費用をだれが持つのか?また区画の間での平らな面をどこまで伸ばすのかによって、区画間でも調整が必要になる可能性があります。

道路面から下げて家を建てると
区画間での協議が必要になる

本来なら、宅地造成の段階でこうした段差を作るなどの作業が行われれば、住む方々の間での調整は不要になるのですが、今回の場合はそうした費用が発生することを家を建てる方が承知している必要があります。
こうした擁壁については建築確認申請の時にチェックがかかると思います。

深い基礎杭を打つ際にガラが出てきた場合の扱いについて
A:あと、ここは前の所有者の調査でもガラが出てくる可能性があることが知られています。今回もし深い杭を打つ工事をする場合、その途中でガラが出てきたときには、その除去にかかる費用と工期遅れの費用については前の土地所有者の負担となるのが建設業界では通常です。こうしたことも事前に家を建てる方は承知し、事前に明確にしておく必要があります。
この土地に安全な家を建てて頂くために
以上のような点をご理解いただき、必要な費用と手間をかけていただければ、安全でかつ周囲の景観とも調和のとれた家が建つと思いますので、この土地の購入者の方にはご理解をお願いしたいと思います。
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以上が建築の専門家お二人のご意見でした。
すべての情報が入手できているわけではないので、間違っているところはご指摘いただければ修正しますが、現状わかっている内容でのご意見としては、素人にも納得できるわかりやすいお話だと思いました。
周囲の住民の方々が安全についての不安を感じている中で、その不安を解消していただき、片瀬山の価値を維持する対応をとっていただけるように関係者のご尽力をお願いする次第です。