【調べてみました】丁目ごとの人口増減傾向

各丁目の人口の増減傾向には大きな違いがある

前回は片瀬山全体での人口の増減について、増加(転入+出生)と減少(転出+死亡)を世代別に調べるという形で、片瀬山全体の人口の増減の要因を説明できる事がわかりました。では今度は各丁目についてはどうでしょうか?各丁目の人口の推移を再掲します。

人口が増えている5丁目のような例もありますが、全般にまだ人口減少が止まっているわけではありませんが、年々減少の仕方は減っています。ただ、各丁目について細かくここ20年の人口増減を調べると、減少した時期、小康状態だった時期、増加した時期などそれぞれに時期や状況が異なっている事がわかります。そこで、前回と同じく、世代別の人口増減を時間を追って調べる事で、各丁目の特徴を調べてみました。
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以下に①各丁目の人口推移に対して、②世代別の人口の増減グラフ(2003~2023年の20年間を5年ごと区切って調べたもの)を示し、そうした増減の結果としての③年齢層構成比推移(10年ごとの推移)をセットで示します。
各丁目を見る前に先にお伝えしますが、
・どの丁目も高齢者の減少トレンドは加速しています。これは前回示したように、大きな割合を占める第1世代が退場(施設に移られたり亡くなられたり)の時期を迎えたことによるものです。これはそろそろ収束すると思われますが、少なくともこれまでの20年は各丁目共通の大きな傾向でした。
その一方で、高齢者の減少を埋めてくれるファミリー層の転入は増加傾向にありますが、丁目によりかなり違いがあります。ここに、今後の丁目ごとの街づくりに参考になる情報があると思います。
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1丁目 この所、人口減と高齢化が一段と加速中 ファミリー層の転出

①人口推移:増減繰り返すも、2010年まではほぼ一定だったが、以降減少に転じ、ここ5年はそれが加速しています。2023年4月で749名

②世代別の人口の増減
ファミリー層動向(下記オレンジと緑の棒グラフ):高齢者の減少を補えないまでも、2013年までは着実に増加していましたが、2018年以降は勢いを失いました(実はファミリー層の転出が原因)。その結果2018年以降一段と人口減少が顕著になりました。

オレンジ(Family子供世代)、緑(Family親世代)の増加は細る一方で、グレー(高齢者)の減少は着実に進んでいる。親世代は転出が多い。

③年齢層構成比推移:2003年時点では他丁目に比べてファミリー層(50代以下)が多い丁目だったのですが、この層の人口比率は減少してしまいました。

ファミリー層の人口(緑の点線の下)10%程度低下している 65歳以上の高齢化率は42.5%と片瀬山一の高齢者の街になりました。

◆2丁目 人口減少著しかったけどピークを過ぎて一段落 ファミリー層転入増でバランス

①人口推移:2018年までは急速な減少だったが、2018年以降ほぼ一定まで回復しています。2023年4月で642名

ファミリー層傾向: 2018年までは高齢者の減少に比べてファミリー層の増加が非常に少なかったのですが(むしろ減少)、その後着実に増加し、2018年以降は高齢者の減少を十分補えるようになり、2018年以降は人口増減はバランスしています。

オレンジ(Family子供世代)、緑(Family親世代)の増加は着実に増え、グレー(高齢者)の減少はピークを過ぎた??

③年齢層構成比推移
2003年時点では1丁目と同様ファミリー層が比較的多い丁目でしたが、2018年頃までは高齢化が一気に進みました。2018年以50歳代が大きく増加しており、この10年間の転入ファミリー40-50歳代の比較的高年齢層が多かった事が推定されます。

2003年の50歳代以下は6割→10年で大きく減少→次の10年で世代交代。2023年の50歳代が10年前の40歳代から激増している。65歳以上の高齢化率40.8%

◆3丁目 ここ10年程安定しており、その間に世代交代が進んでいる 世代交代がバランス

①人口推移:2015年ころまではゆっくりと減少を続けていたが、それ以降はほぼ一定 2023年4月で1225名 片瀬山最大の丁目です。

ファミリー層傾向: 高齢者減少を補う増加がなかったが、2013年以降は着実な増加により、充分補えるようになってきており、最近はほぼバランスしています。

③年齢層構成比推移
2013年以降は安定して世代交代が進み、50歳代以下の年代が増えています。しかしここも世代交代の主力は40ー50歳代の転入者ファミリーである事がわかります。

2023年の40歳代も10年前の30歳代より大きく増加している事から比較的若い層による世代交代も進んでいる事が伺えます。65歳高齢化率38.0%

◆4丁目 少しずつ人口減少中 ファミリー層の増加がそれほど増えず人口減少

①人口推移:一度急減した後、しばらく一定だったが2013年頃から再び減少中です。 2023年4月で727名

ファミリー層傾向: 2013年以前は一時転入が増えた時期もありましたが、それ以降減少傾向が続いている。最近は高齢者の転出が加速して人口減少幅が大きくなっています。

③年齢層構成比推移:2003年時点で50代以下のファミリー層が少なく高齢者世帯の多い丁目でした。2013年頃までに一時、世代交代が進んだものの、2013年以降は人口減とファミリー層の比率低下が進行しています。

65歳高齢化率は40.6% 最近の転入者は40-50代のファミリー層である事がわかります。

◆5丁目 人口増加傾向が続いている ファミリー層の転入が多くわずかだが増加が続く

①人口推移:片瀬山の中では唯一人口が増加基調にある街です。2023年4月で813名

ファミリー層傾向: 2010年くらいまでは少な目の高齢者減少とバランスするファミリー層の転入でしたが、その後高齢者減少が他の丁目と同様に増えたものの、順調にそれを上回るファミリー層の転入があり、人口も増えると同時に世代交代もできています。

③年齢層構成比推移:2003年時点ですでにファミリー層が多く若い街でした。50代だけでなく、若い年齢層の転入があり、このため 20歳までの年代層が着実に増えているのも特徴的です。

65歳高齢化率は34.7%と片瀬山の中ではNo1の若い街ファミリー層では、満遍なく各年齢層の転入がある事が推定されます。 

まとめ 
・転入状況・世代交代の様子は丁目によってかなり異なる
・ここ5年程度の傾向では
 5丁目:人口増となり、世代交代が進み、世代間バランスもとれている。
 3丁目:人口は安定化しており、世代交代も進行中 。4-50歳代転入者多い
 2丁目:もともと高齢者が多く人口減少が顕著だったが、現在は安定化して世代交代も順調
     4-50歳代転入者の割合が多い
 1丁目:人口減が加速中 もともとファミリー層が多く、世代間バランスはとれている
 4丁目:もともと高齢者が多い地域で人口減が継続。4-50歳代転入者が主力を占める。
これらの各丁目の状況が複合した結果が前回の片瀬山全体の人口動態になっていると言えます。
現在の転入者年齢は4-50歳代の両親のファミリー層に集中しがちで、10年すると子供は巣立ち、20年すると親は高齢者となるという現実があります。もう少し若年層が子育てできる街になる施策(例えば2世帯住宅の誘致や片瀬山育ちの子供達がファミリーとして戻ってくる住宅地になる等)が実現できれば、様々な世代が助け合って一緒に暮らす成熟した街が実現すると思います。(Reported By S)

おまけ 今回の人口統計分析の算出方法(面倒ですから興味のある方だけ)
これらの人口統計分析の元になったデータは藤沢市のホームページの人口統計ページにある町丁字別年齢別人口から、各丁目毎の毎年4月1日のデータを利用しています(住民台帳による)。ここで年齢や人口の推移はわかりますが、転入や転出のデータはそのままではわかりません。今回は以下のように算出しています。
まずその丁目のある年とその1年後の年齢別人口の表を比較します。

たとえば上の表の片瀬山2丁目においては、
2022年4/1時点で22歳の人=2000年4/2~2001年4/1生まれの人が8人居て、
2022年4/2~2023年4/1の間に2人転出し、2023年4/1時点で残り6人が23歳を迎えた
という事がわかります。これを全年齢、毎年の変化に対して集計していくことで毎年の年齢別・誕生年別の人口とその増減(≒転入あるいは転出)がわかります。今回はこれらを20年分1年ごとに集計し、各種グラフを作成しています。
しかし、すぐわかる方もおられると思いますが、この計算方法は一つ難点があります。同じ年に同じ丁目で同じ年齢の人が転入と転出が両方発生すると、相殺してしまいます。これが誤差となります。役所の中ではきちんと記録されているはずですが、公表はされていません。つまりこの算出方法では実際の転入転出より少なく出てしまう宿命があります。丁目の人口が少ないほどこの相殺の確率が減る事がわかります。それを考慮すると片瀬山の各丁目くらいが限界で、それ以上人口が多い場合には信頼性が著しく落ちます。今回の片瀬山全体の転入転出の数値は、各丁目での算出値を積算してこの相殺誤差の発生を防いでいます。学術論文ではないので、確率を考慮すれば各丁目の傾向はつかめると判断して、今回及び過去の人口分析の記事にしています。