【調べてみました】片瀬山の高齢化率は低下に転じ上がらない

高齢化率は上昇から低下に転じその傾向は続いている~最新の人口統計から

藤沢市内各丁目の細かい人口統計が今年も市のホームページで公開されています。かねてより、片瀬山は高齢化の進行と人口減少が問題だと言われ続けていましたが、その動向はどうなのでしょうか。藤沢市での各丁目ごとの詳細な人口統計の発表開始からちょうどこの4月の調査で20年たち、その間の様々な変化を詳しく調べてみました。

人口減少の動き
全丁目で見るとこの所は平均年間0.3%くらいのごくゆっくりしたペースでの減少が続いているが、丁目によるばらつきが大きい
5丁目だけが増加トレンドで、他はゆっくりと減少のトレンドとなっています。この20年で比較的減少比率が大きいのが2丁目です。一方でその2丁目及び3丁目はここ5年くらいは減少が止まっている ように見えます。5丁目の増加傾向が残りの1丁目、4丁目の減少傾向を補いきれず、全体としてわずかずつの減少となっている事がわかります。

各丁目及び全丁目合計の毎年4月1日の人口を2003年を1として以降を比率で表現したグラフ


高齢化率の動き
2015年を境目に、全丁目で高齢化の進行は止まり、ここ数年はむしろ逆の傾向がはっきりしてきた (高齢化率=65歳以上の人口の割合)
片瀬山の高齢化率は年々上昇を続け2015年41.24%を記録しましたが、以降は低下に転じて2023年は39.05%となっています。各丁目の数字を見ても、すべての丁目で低下傾向となっており、高齢化率の上昇は止まったと断言してよいと思われます。

参考:2023年度片瀬地区の高齢化率28.35% 藤沢市は22.4% 神奈川県は26% 

ただ、丁目によって高齢化率の高い丁目(1,2、4丁目)と低い丁目(3,5丁目)に分かれています。ちなみに藤沢市全体の高齢化率は2023年で22.4%で、神奈川県(約26%)の中では若い都市なのですが、その中では片瀬山は圧倒的に高齢化率の高い街になっています。

●こうした変化は何によって決まっているのか?
「高齢化はストップしたが、人口はまだ少しずつ減少している」という片瀬山におけるこうした変化(人口動態)は以下の①~③の要素のバランスで決まっている事が、今までの分析でわかっています。(過去の分析記事 →人口分析その1 人口分析その2) すなわち、
 高齢者世代の方々が減少・転出する。→人口は減少寄与 高齢化率は低下寄与
 ファミリーが転入する。30歳~50歳代の親世代とその子供の年代(0歳~10歳代)→人口増加寄与 高齢化率は低下寄与
③ 若者世代(20歳代)が巣立ちをして転出する。→人口は減少寄与 高齢化率は上昇寄与
これらの変化要因がこの20年間にどう働き、結果としてどうなったのかを見てみましょう。

●この20年間で人口構成はどのように変化したのか?
まず、年齢別の人口分布を2003年から2023年まで10年ごとにグラフ化したものを示します。横軸は年齢、縦軸はその年齢の人数で同じスケールにしてあります。20年間の間に高齢者の大きな山がつぶれてかなり平らになった事がわかります。以前は60歳代に120人くらいの大きなピークがありましたが、今はピークは細かくその値も100人に至りません。

横軸は年齢(0~109歳)縦軸はその年齢の人数

さらに、この3枚を重ねてみたのが次のグラフです。(①~③に注目点を示しました)
ピークが10年たつごとに高齢側にシフトするとともに減少し、高齢者の方の退場が進んだ事がわかります。
40台後半から50代前半にかけてのFamily世代人口が大きく増えている事がわかります。この年代層の転入が多い事がわかります。
一方で、20代から30代前半での「巣立ち」の転出が多く2-30代の人口がこの20年の間にずいぶん減った事がわかります。

2003年(グレーの面表示)2013年(緑色線)、2023年(紺色線)の人口の年齢分布を重ねたグラフ

これは、様々な年齢の人々の出入の結果として現れた形ですので、これを年齢層別の出入という視点でもう少し詳しく見てみましょう。
世代別増減(転入ー転出)人数の推移
さきほどの①~③を定量的に確認するために、2003年から5年間ごとの年齢層増減(転入ー転出者数)の推移を調べてみました。
これでわかる事は、この20年で①高齢者+③若年層 の転出者(下記グラフでグレー及び青)が5年間で100人くらい増えているものの、②ファミリー層の転入者(下記グラフでのオレンジとグリーン)はそれ以上増えており、順調に世代交代が起きている事がわかります。それでも、まだ各5年で①+③の転出が②の転入を上回っているために人口減少が続いている事がわかります。ただ、転出が転入を上回る数は2003年→2008年の5年間では108人だったのが、その後は40人~70人/5年にとスローペースになっています。

転出者(①高齢者+若年巣立ち型)はー323→-419人
転入者(②ファミリー層の親世代+子供世代)は215人→346人 とそれぞれ増加しているが差が縮まっている

高齢化率の上昇から低下への逆転はどうして?
高齢化率の上昇に寄与するのは、②の若年層の転出(上のグラフの青)と65歳をその年に迎える方の人数です。一方で下げる方向で寄与するのは①高齢者の減少・転出(上のグラフのグレー)と③ファミリー層の転入(同オレンジとグリーン)です。現在は①高齢者人口の減少が高レベルで続き、③ファミリー層の転入者は段々増加しています。これらはいずれも高齢化率を下げる方向に働きます。②若者の転出はあまり変わりませんが、ここ数年は65歳付近の人口が一時に比べて減少して、その年に65歳を迎える人数が減少しています。その結果、高齢化率は2015年頃を境に低下するようになり、現在はそれが安定的に継続しています。

●今後の期待
下記は生まれた年別の人口分布が2003年、2013年、2023年でどう変わったのか?のグラフをご覧ください。片瀬山の最終分譲が終了した1980年頃(→片瀬山造成の頃3)に30歳だった方、即ち1940年生まれの方までを第1世代として定義すると、(この方たちはずっと住み続けてきた方たちですが)、この20年というもの、その第1世代が急激に減少し、世代交代が進んで人口分布がなだらかになっている事がわかります。今のペースでいけば、今後は第1世代の家の土地を若い世代(4-50歳代でしょうが)が引き継いで、グラフの左側が持ち上がり、さらに平らなグラフになる事が予想されます。そうすると、高齢者の減少とファミリーの転入がバランスして、人口の減少も止まることになると思います。

2003年(グレーの面表示)2013年(緑色線2023年(紺色線)の生年別の人口分布グラフを重ねたもの

ただ、こうした未来を描く事ができるためには条件があります。すなわち次の世代の住民であるファミリー層が住みたい街、時代の要求にあった街になっていることが前提になります。「今住む人も、いつか住む人にも、住みよい街をめざして」と掲げている片瀬山環境委員会の活動目的もまさにそこにあります。次回は、各丁目の傾向の違いについてみてみたいと思います。