【歴史を訪ねて】京急江の島路線バス回顧と全線乗車その3

懐かしい思い出が次々と・・

前回に引き続いて
②江ノ島→大船駅 のバスの旅を続けます。
鎌倉山ロータリーバス停を過ぎると、急な坂を下りて深沢の町に降りてきます。左手は東海道線の107年ぶりの新駅になると話題の藤沢の村岡新駅と一体開発が進む鎌倉市深沢地区です。

江ノ島発大船駅行きバス バス停と実際の到着時間 一番下が深沢地区 大船に近づくと昔の小袋谷陸橋の所で、昔の専用道路の痕跡が見られる(オレンジ点線 モノレールの下) 
鎌倉市役所が予定されている深沢地区。深沢の広大な空き地は以前の国鉄・JR東日本大船工場跡地、村岡新駅は以前の湘南貨物駅跡地

深沢を過ぎて再び坂を登ると左手に三菱電機鎌倉製作所があり、国産衛星等がここで作られています。そこを過ぎると山崎という地区です。

深沢からの登り坂湘南町屋駅近く 後ろの風景

少しずつ乗車する方がいらっしゃいます。(鎌倉山で二人、深沢で一人、山崎で四人、富士見町で二人いずれも日本人の方)。鎌倉山~江ノ島の路線は廃止になるのですが、鎌倉山~大船・鎌倉はまだ路線として継続します。モノレールより細かくバス停があり、生活の足として使っている人もまだ多いらしいことがわかります。新しくなった小袋谷の大きな陸橋で横須賀線を飛び越えて大船駅のロータリーに到着したのが、12時57分と定刻から9分遅れでした。

今まで乗っていたバスが大船駅に到着した お疲れ様でした
大船駅東口バスターミナルの全体風景

大船でお昼ごはんを食べて、鎌倉駅に移動しました。

③鎌倉駅→片瀬山入口(江ノ島行き)
鎌倉駅前のバスターミナルは大混雑でした。バス乗り場は長谷観音・大仏方面へのバス乗り場になっていることもあり、バスを待つ人の半分くらいが外国人観光客です。14時10分発の今週最後の(といっても土日に各2本だけ)江ノ島行きが定刻5分ほど前に入ってきました。駅でもう満員となり、定刻に発車しました。

鎌倉駅東口を出発した時にすでに満員のバス お客さんの半数以上は長谷観音と大仏に向かう人達で 外国人がすごく多い

駅ロータリーを出ると若宮大路を南に下り下馬の交差点で右折して江ノ電の踏切を越えます。六地蔵を過ぎて江ノ電と並行して西に進みます。この後長谷観音・大仏を経由して常盤口で左折して鎌倉山に向かうのですが、常盤口付近までは一般の道路です。この路は、かつて鎌倉山と鎌倉駅まで結んでいた路線をそのままなぞっています。

若宮大路近くは道が混んで時間がかかりました。

バス車内から見ても、長谷観音から大仏までは歩道を歩く外国人がとても多いです。道沿いの土産物屋さんで立ち止まる人もいて、歩道からあふれる感じです。もう少し分散して鎌倉を楽しんでもらう工夫が必要だと思いました。

大仏近くの歩道をあるく人の半分は外国人
大仏前でたたずむ外国人たち

長谷観音と大仏前で半分以上の人が下車して、バスの中は落ち着きを取り戻しました。まだ立っている人が沢山いましたが、その後のバス停で少しずつ降りる人がました。このバスを普段から使っている人たちでしょう。道の混雑と乗降のせいもあり、定刻からは8分遅れです。
常盤口の有名な「ちんや食堂」の角を左に曲がって笛田です。いよいよ鎌倉山に向かって坂を登りだします。連載第1回で記した戦後すぐの木炭バスでの事故はこのあたりだったのだろうと思われます。

常盤口~片瀬山入口までのバス停と実際の到着時間
常盤口バス停付近での車内の込み具合

バスは曲がりくねった登り坂をゆっくり上っていきます。若松、旭ヶ丘、若松といった分譲区画ごとの名前のバス停を過ぎていきます。もうほとんどが日本の方で沿線に住む方ばかりになったようです。
旭ケ丘バス停の前にはかつてボンジュールというパン屋さんがあって、1988年TVドラマの舞台にもなりましたが、今では別名のカフェになっています。

この店を左に入ると右手にかつて宗像志功さんのアトリエがあって、その死後版画美術館ができました(今は閉館)。そこをさらに行って突き当り左にはかつて歴史の舞台になった近衛邸があり、右に行けば七里ガ浜住宅地を見下ろす絶景+花見ができました。今は桜が老木となってあまり花見には向いていません。色々思い出してしまいます。
バスがさらに坂を登ると見晴バス停に着きます。

車内からも見晴バス停横のカフェからの景色が見える

そのすぐ近くにはかつて「公詢閣」という建物があり、そこは帝国ホテルが運営する紳士淑女の社交施設でした。(詳しくはこちら
そしていよいよ鎌倉山ロータリーに到着です。ここで大船から来る有料道路に合流します。
鎌倉山ロータリーでは14:43となり定刻からは10分遅れの到着となりました。
これから先は鎌倉山の住民の方ではなく江ノ島方面に行く方ばかりですから、ぐっと少なくなるはずだったのですが、20人以上の方が乗っていたのです!
鎖大師入口で2人、津村で1人、そして片瀬山で私を含めて3人が下車して、17人が江ノ島方面に向かったのでした。この方たちは鎌倉方面から江ノ島方面に行く人たちで、5月からは交通手段を失うことになるのですが、まだまだ需要はあるのだということが分かった次第です。

こうして京急江ノ島路線バスの乗り収めは終了しました。
この旅でわかったこと
・誰が乗っているのか?
スマホで知って利用する観光客が沢山いました。複数の観光ポイントと駅を結んでおり、もっと知られる工夫をすればまだまだお客さんがいる感じがしました。また普段の生活圏での利用者も、特に鎌倉山の住民の方はモノレールが利用できない分、着実に利用してくれていると思いました。*
・乗車しての感想
海あり山あり歴史的な街ありの楽しい観光路線だけに本当に残念な気がします。100年近く前の鎌倉山を創り上げた方々がこの路線に想いを込めた理由が分かる気がします。個人的にも懐かしい事を次々と思い出しました。私に限らず多くの方の記憶に残っていくのではないかと思いました。(Reported By S)

*鎌倉山の高齢者の病院通いの交通手段としては、湘南鎌倉病院と鎌倉山・梶原・西鎌倉等の鎌倉市の一部地域を結ぶ予約制のオンデマンドバスが実証テスト運用しています。詳しくはこちら