他の市より手厚いサポートで盛んな地域活動:「市民の家」は何が違う?
前回に引き続いて生き字引Sさんの説明をもとにまとめてみました。
◆「市民の家」は他の市の「自治会館」「町内会館」とは違う
実は藤沢市の「市民の家」は他の市の「自治会館・町内会館」とはかなり違います。「市民の家」は土地建物が市の所有で、それを地元住民の自治組織に運営を委ねるという形になっています。そのため、土地代含めた建設費は自治会の負担にならず、さらに光熱費等基本的な経費は市の負担となっています。一方、他の市(例えば鎌倉市)では土地は市有地の貸与ですが、建物は各自治会が建設費を用意して、運営はもちろん、さらに運営経費も負担しなければなりません。鎌倉市内の大規模住宅地の自治会に聞取り調査をして比較したのが下の図です。これらは横浜市等でも同様な仕組みです。
◆活発な住民のコミュニティ活動の基盤になっている
結果として、藤沢市内で活動する自治会は活動場所の確保についての負担が少なく、自治会費が安く済みます。また、自治会に限らず各種サークルや団体が利用する会議室等の利用料金も大幅に安くなります。藤沢市の「市民の家」の制度発足の頃を知る方によれば、会館の土地や建物が誰か個人の方の所有で自治会活動がそれに左右される という事を避け、真の住民自治ができるようにという狙いがあった との事でした。
Sさんは、こう言います。「こんなにありがたい、使い勝手の良い仕組みなんだから「市民の家」を使わない手はないんだよ。実際片瀬山ではサークルやボランティア等の住民活動がすごく盛んなんだよね。ただ、市の施設だから、災害時に防災拠点になるのは断れないとか、コロナでは市の施設として色々指示に従わなきゃならないとかあるけどね」。
しかしこの制度ができて45年たち、藤沢市の一部の市民の家では利用度の低下が問題になっています。現行41か所ある市民の家の今後について、見直しの議論があるようです。ただ片瀬山は高い利用率と運営委員会の活躍、それを支える自治会のバックがあり、この後述べるように移転・建て替えを通した充実の話が進んでいます。制度を生かして活発な活動ができるかどうかは住民の意識の問題なのでしょう。「市民の家」の創設当時に新しい街ができた経緯から、自分たちで活性化させるという意識の伝統が今につながっているのではないか?と感じました。
次回は、市民の家を支える活動の実働部隊 市民の家運営委員会 についてご紹介をし、新しい市民の家 の現在状況についての説明です。
◆◆◆◆【始まりを探して】シリーズコンセプト
片瀬山ができて50年以上たちました。長い間に少しずつ整備されてきた施設・モノ(ハード)や仕組み・制度・活動(ソフト)等の始まりの時に、どんなことがあったのか、どんな思いがあったのか?今に残るモノ、資料、証言などを調べて伝えることで、その価値や将来について考えるシリーズにしたいと思います。ご期待ください。
【本シリーズからのお願い】片瀬山に関係する古い写真や資料をお持ちの方はお知らせください。例:片瀬山のパンフレット、周囲の様子がわかるスナップ写真、学校・幼稚園・プール・公園等の写真、バス等公共機関等の写真、当時の新聞記事、自治会の資料、卒業アルバム等古いものであればあるほどありがたいです。皆様のご協力をお願いいたします。
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