【始まりを探して】片瀬山防犯カメラシステム-その1

駐在さんの熱意が自治会役員を動かした~導入が決まるまで

片瀬山住宅地は治安が良い、安心な街 とよく言われます。住民による防犯パトロールやこども110番参加数等は市内のどこよりも多いです。中でも現在9か所13台ある防犯カメラがもたらす安心はとても大きいと思います。

ネットで調べても、不動産販売会社の方に伺っても、片瀬山住宅地は治安の良さの評価がとても高く、その根拠として防犯カメラの話が必ず出てきます。

市民の家の前の防犯カメラ 3方向を向いている
2019年更新の2代目 

この防犯カメラが導入されたのは2009年(平成21年)のことです。大規模な住宅地をカバーする8か所11台(2009年設置当時)にのぼる防犯カメラシステムは自治会が主導して設置したもので、神奈川県下でもほぼ最初に導入されたものでした。今でこそ、藤沢市内で312台(2020年)の防犯カメラが稼働していますが、当時は極めて珍しく、新聞にも取り上げられました。今回はその「はじまり」がどのような経過をたどっていたのか、その後どのように今につながっているのかを、導入当時の中心メンバーだった方々、それを引き継いだ方々に伺い、その話をもとにまとめてみました。
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全国の侵入盗件数 2002年(平成14年)前後が一番多い
赤が住宅の件数 警察庁HPから

きっかけは窃盗犯罪の急増
話は導入の数年前にさかのぼります。2002年あたりから片瀬山地区での空き巣・侵入盗の件数が大幅に増えました。年に2-3件だったのが急増し2004年には24件に急増しました。バイクを使ったひったくり事件も増え始めました。

車で来る窃盗団を防ぐには8か所押さえればよい
急増の背景には当時全国的に急増した「窃盗団」の存在がありました。偵察役と見張り役と侵入役が、手分けして10分で仕事を終え車で去る。こんな背景で片瀬山でも防犯パトロールが始まる等防犯の機運が高まりました。車のナンバーが残る防犯カメラが効果的であることがわかり、藤沢市でも設置補助金が出るようになりました。犯罪増加に頭を悩ませていた片瀬山駐在所の佐武さんは、片瀬山においては出入りの道路8か所にカメラを設置すればすべての車の出入りが記録できる事に気付きました。カメラの設置補助金は自治会が申請する必要があります。2006年頃から佐武さん(当ホームページですでに4回にわたりご紹介:こちら)は様々な機会をとらえて、自治会に働きかけました。犯罪の手口や件数を紹介し、防犯カメラの必要性を説明し、駐在だよりの回覧等でもたびたび取り上げました。

2007年新年の駐在だより 防犯カメラの設置提案が中央に掲載されている

佐武さんの奮闘
当時の各自治会の会議では、佐武さんがいつも片瀬山の地図に赤丸を記した紙を持ってきては、「これで・・」と熱心に説明していました。しかし、自治会の役員は1年任期なので、理解を得ても4月になると入れ替わってしまいます。なかなか展望が開けませんでした。

当時佐武さんが説明に使った赤丸地図 ぼかしてあります

導入チーム設立活動開始
それでもあきらめずに説明し続ける姿を見ていた、2007年度の5丁目自治会の会長副会長メンバーがそれに動かされて「わかった!」「2008年度に、役員の立場を離れたらチームを作って導入活動を開始しよう」と決意しました。佐武さんは「説明会で住民から出る質問は全部引き受けてお答えします!」と言って喜んだそうです。2007年度から事前調査を開始し、2008年度からいよいよ表立って活動を始めました。2007年度連合自治会長の方も迎えての4名でスタートしました。

見学等を通じて基本方針を考えた
導入チームは公式に2008年4月に第1回のMeetingを開き、2009年の設置を目指して、市との補助金等の折衝、連合自治会との協議、設置場所案、カメラの仕様案と機種選定、設置業者選定・・等を開始しました。同年7月、市内で補助金を受けて防犯カメラ2か所を導入した町内会に見学に訪れました。この時には自治会全体に活動を広げるために、2008年度の新しい連絡会役員メンバーにも参加してもらいました。

鵠沼でカメラを導入した町内会を見学した導入チームメンバーと2008年連絡会役員

実際の設置例を見学し、片瀬山においてはどんな形でカメラを設置するか?検討し、以下のような運営方針を立てました。
1片瀬山すべての出入り(車のナンバー)を記録する事を目指す
2画像はモニターしない。記録画像を見る必要が生じた時にのみ、手続きを踏んで取り出す
3画像開示手続き:警察等の要望等の元で該当自治会長の承認のもと取り出す
4画像開示作業やメンテナンス作業のために運用チームを設置する。
車のナンバーに焦点を絞った点、画像を取り出すのは自治会長の承認を得た時だけという制約をつける事で、住民のプライバシーが厳密に守られるという保証になっています。特に住宅地においては、この点が重要だと考えられました。
2008年秋に5自治会ごとに事業計画書を市に提出し、いよいよ12月に住民説明会を迎えました。

1代目のカメラの性能仕様は上の通り 2代目はプライバシー運用は同等ですが、性能が大幅に向上

一番心配されていたプライバシーの問題について、きちんと説明できたことで多くの方の賛同を得る事ができて、翌2009年3月の5つの自治会総会にて導入計画の正式な承認決議が行われ、導入が決定しました。こうして駐在の佐武さんの熱い思いから始まった防犯カメラプロジェクトはその思いを受け取った導入チームの元で実現に向けて大きく動きだしました。
次回は実際の導入にまつわる様々な事、導入後の事件解決例 についてです。

◆◆◆◆【始まりを探して】シリーズコンセプト
片瀬山ができて50年以上たちました。長い間に少しずつ整備されてきた施設・モノ(ハード)や仕組み・制度・活動(ソフト)等の始まりの時に、どんなことがあったのか、どんな思いがあったのか?今に残るモノ、資料、証言などを調べて伝えることで、その価値や将来について考えるシリーズにしたいと思います。ご期待ください。
【本シリーズからのお願い】片瀬山に関係する古い写真や資料をお持ちの方はお知らせください。例:片瀬山のパンフレット、周囲の様子がわかるスナップ写真、学校・幼稚園・プール・公園等の写真、バス等公共機関等の写真、当時の新聞記事、自治会の資料、卒業アルバム等古いものであればあるほどありがたいです。皆様のご協力をお願いいたします。
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