小さな気付きからそれは始まった
片瀬山周辺の主要道路の無電柱化を要望するという大きな話はいろいろな調査や多くの人たちを巻き込んで進める必要があったと思いますが、どんな経緯があったのでしょうか。
ここから、杉山さんにお聞きしました。
無電柱化が必要と感じ、何とかしなくてはと思ったきっかけは何だったのですか?
杉山さんー片瀬山地区、片瀬地区の皆さんが出席している地域の防災会の席上、片瀬地区の方が片瀬中学への避難方法について車での避難を強く希望され、それが現状では諸事情でなかなかできないという話を聞いた事がきっかけです。具体的に調べてみると、避難の重要性はもちろん、それ以外にも重要な課題がある事がわかりました。
いろいろ聞いて歩かれたのですよね?
杉山さんーはい。関係しそうな所を廻りました。
〇片瀬中学は片瀬の皆さんにとって災害時の避難場所として最もあてにされている
まず、話の発端になった片瀬中学での避難についてです。何といっても身近な高台にあり、津波・水害には絶対安全という安心感があります。東日本大震災の時には片瀬中学は多くの方、片瀬地区住民だけでなく、観光客含めて多くの方(約300人 夜間も150人)が集まった広域避難所でした。
片瀬市民センターによれば、その後も何回か避難所開設があったのですが、特に2019年の台風19号では360人あまりの避難者がありました。片瀬山住民はその事を知る人は多くなかった印象です。
〇片瀬山には防災拠点が集まっている
さらにわかった事は、高台にある片瀬山には防災上の重要な場所が集まっているという事です。避難場所としての片瀬中学の重要性は今述べた通りですが、水道局(県企業庁藤沢水道営業所)で聞いてみると、片瀬山住宅地の北端にある片瀬配水池は災害時の給水用の拠点となっている事がわかりました。(杉山さんの訪問の後、偶然当ホームページで取材しました。)災害発生時はここから給水車が出発して藤沢市南部の住民に水を配る予定になっています。
さらに、住宅地南端付近には防災倉庫があり、備蓄物資は藤沢市全域への供給を想定しています。この備蓄物資と先ほどの水の供給には、周辺道路の確保がとても重要であることがわかります。
〇地震や風水害での電柱倒壊のリスクが知られるようになった。政府は無電柱化を推進中
一方で電柱倒壊で道路が通行不能になる事例が広く知られるようになりました。
1995年の阪神淡路大震災では約8,100本、2011年の東日本大震災では約56,000本の電柱倒壊が起こり、長期間緊急車両の通行や物資輸送に影響を及ぼしました。感電の危険性から、一般の人では作業できず復旧に時間がかかるからです。当地の場合で言えば、もし片瀬山へ出入りする道路や片瀬山内主要道路で電柱が倒壊したら、片瀬中学での避難者にも片瀬山住民へも外部からの物資が届きません。さらに片瀬山から出発する藤沢市南部地域への給水や全市への備蓄物資供給もできない という藤沢市全体の問題になります。
こうした事態への根本対策として、2016年(平成28年)に無電柱化推進に関する法律が成立し、県の計画、市でもそうした道路の指定の計画が現在進められています。
〇交通弱者や観光客等は車で避難する人もいて、そういう方は避難自体が困難
片瀬地区から片瀬中学へは徒歩避難が市の基本方針となっています。実際、緊急車両向けの場所確保の必要性もあって、災害時片瀬中学での一般車の駐車はできません。しかし2011年の震災の時には、高齢者や観光客などが中学に車で避難しようとして、中学周辺の主要道路に駐車し、周辺で渋滞が発生しました。防災会の集会で問題になった片瀬地区の方の「うちのおじいちゃんの足では坂を登れるわけないだろう」という不安は切実です。大震災の時の経験から、そうした車がやむを得ず来た場合の仕組みが片瀬山自治会・防災会で準備されています。しかし、電柱倒壊で道がふさがれてしまうと、そういう人たちの避難はさらに一層困難になってしまいます。龍口寺~片瀬目白山ではがけ崩れの心配もあるのですが、それは別途、市に請願が出ており、市としての対応予定と聞いています。
こうした背景をもとに、無電柱化の要望書という話になったのですね。
杉山さんーはい。情報収集にあたっては関係部署の担当の方には、詳しく教えて頂きました。
また、現在藤沢市でも無電柱化を検討していく道路の候補選定作業を行っている事がわかりました。
自治会連絡会で協議して要望書を出す事になった
そこで片瀬山自治会連絡会で状況を説明し、上で述べた電柱倒壊による問題発生を防ぐために、片瀬山の5つの自治会・防災会共同で、無電柱化についての要望書を市長宛て提出する事になったわけです。原案を元に連絡会の場でも知恵を集めて、提出文書をまとめました。
高橋さんーこの要望書に対して市は現在検討中の段階でまだ回答はありません。さらに仮に実現方向となっても5年10年以上かかる話になると思います。災害時にこうしたリスクと課題があることを地域で共有し、継承されていく必要があります。防災訓練等の折にもそうした内容や対処手順の確認、PRをする事が大事ですね。
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レポーター感想:将来を考えた防災や街づくりの努力は本当に重要で、大変な努力を伴うものだと思いました。杉山さん、高橋さん、自治会の皆さん、協力して頂いた皆さん本当にご苦労さまでした。また、今回のインタビューを通じて、自治会と関連組織の活動が住民の生活にどんなかかわりがあるのか、皆さんに知って頂く機会になればと思いました。
また、当ホームページが水道局に取材した際に、今回の要望書については、「片瀬山周辺の道路の無電柱化の取り組みは実現すれば非常に助かる」というコメントを頂いた事を付記しておきます。
(Reported By S)