【自由研究】なぜ、ユリの花をよくみかけるのか?

知らない間にユリの世界でおきていたこと

多くのお宅でユリの花が咲いています あれ?!と思ったこと
8月に入って猛暑を避けて早朝に散歩をするようになりました。5時台に歩けばお庭に咲く夏の花をゆっくり眺める事ができます。そこで気づいたのですが、多くの庭にユリが咲いているのです。私の家の前の通りでは、南に面して並んだ5軒で咲いていました。どの家のユリも大きくて立派です。一本に限らず何本も。片瀬山ではユリを植えるのが流行っているのだろうか?そのうちの親しいお宅で写真を撮らせて頂きました。

肥料が行き届いているのか1本から何本も花が咲いています。背も高く太い茎です。他にも何本か咲いています。
近づいてみると、花は純白で立派、これぞイメージ通りのユリの花です。2022.8.11

背が高くて、1m70cmくらい、純白で清楚で立派な花です。私の記憶ではテッポウユリかなと思いました。聞いてみると、「気が付いたら生えていたんですよ」 見事なユリなのに本当?ユリ根で増やしたんじゃないのですか?と驚きました。実はレポーターの私の家の庭にも2mくらいの背の高い見上げるようなユリの花があります。普段自分の家の庭の事には無関心でちょっと気が引けながら、庭の丹精に励む私の母にも聞いてみました。

見上げる大きさになった自宅のユリの花 2022.8,11

すると、「植えたんじゃないわよ。去年1mくらいのユリが生えてきて、小さな花をつけたのだけど、今年はこんなに立派になっちゃってびっくりよ。土にユリ根が混ざっていたのかしら。でもここ数年、土を入れた覚えはないのよ。テッポウユリだと思うけどね」 との返事で、ここでも!と驚きました。
勝手に生えてくる「野良」のユリなのか~。確かにそれでなければ5軒も並んでユリは咲かないよなあ と思い至りました。

気を付けて歩いてみたら・・
翌日の散歩の際に気を付けて歩いてみたら、あるわあるわ・・
〇片瀬山ほぼ全域(1~5丁目まんべんなく)のお庭にたくさんユリが咲いている
〇雑草が密に生えている空き地にはあまり咲いてない
〇肥料の効いたお庭の花は大きく見事
〇適当に人の手が入る玄関先くらいに1mくらいの背丈で咲いているものが多い
〇道路沿いのわずかなコンクリの隙間に咲いている「ド根性ユリ」もたくさん見られる。
〇真っ白いユリと外側に赤紫色のスジのあるユリの2種類があるようだ 数的にはスジのタイプより真っ白の方が多い。

よくぞこんな所で咲いている「ド根性ユリ」 
ど根性が必要な環境下でさらに一族を増やしている


調べてみました  候補はこれ! 種で増えるようになっていた
知りたい事はネットで調べてみます。花の形から見て、それらしいのは以下の三つの種類です。
〇テッポウユリ 日本原産のユリです。これはユリ根(鱗茎)で増えます。当然ながら、狭い隙間に根を張る「ド根性ユリ」にはなり得ません。また、花が咲く時期が6-7月という点からも時期的に違います。だから今、8月に咲いているのはテッポウユリではありません。花の形がそっくりなので私や母を含めて テッポウユリ と思ってしまいましたが、では何という種類のユリなんでしょうか?結論から言うと、今見かけるのは以下の2種類のいずれからしいのです。
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〇タカサゴユリ 花の外側に赤紫のスジが入っており、現在は野生化して日本各地に生えています。これこれ!片瀬山で見つけた!(次の写真)

先程のど根性ユリの拡大写真 外側に赤紫のスジがついている→タカサゴユリです。

台湾原産のユリで、テッポウユリ亜族の帰化植物です。高砂は台湾の旧名です。花が咲くのは、7月~9月。1924年に日本に導入されました。テッポウユリより大きくなります。こちらは風に乗って種を飛ばし、そこでユリ根を大きくして増えていきます。連作障害が起きやすく、数年繁殖した後、姿を消す事があります。片瀬山で見られたど根性ユリのいくつか、花の外側にスジのあるのはこれでした。

〇シンテッポウユリ テッポウユリとタカサゴユリの交配で1951年に生まれました。タカサゴユリの野生化につれて、日本各地でテッポウユリとの自然交配が起こり、多く生まれています。花が咲くのは8月~9月でテッポウユリより遅い。別名「夏百合」とも呼ばれます。これですね! 片瀬山内ではタカサゴユリより、こちらが勢いがあるようです。先ほどの写真の私の自宅のユリも、前の通りのお庭のユリもこれだと思われます。タカサゴユリと同様に種で増えます。どうりで勝手に生えてきたわけです。繁殖力はタカサゴユリ、美しさはテッポウユリから引き継いだ、いいとこどりのまさにシン・テッポウユリ ですね。ただ、あまりの繁殖力に、環境省の総合対策外来種として対策が必要な外来種として指定されています。

あるお宅の玄関先のシンテッポウユリ 花の中にカマキリがいました。大きな花はカマキリもかくまってくれます。

テッポウユリはすごいんです
実は日本原産のテッポウユリにはすごい歴史がある事がわかりました。19世紀にシーボルトによって欧米に持ちだされ、育てやすく美しい花として、それまでの欧米での品種を一掃する人気となり、キリスト教の祭壇に純潔を象徴する花として欠かせないものになりました。その後世界のユリの園芸品種の源流になりました。もともと、ユリはキリスト教にとって特別な花なのです。有名な絵画、例えばダ・ヴィンチの「受胎告知」では天使の後ろに咲いています。(ダ・ヴィンチの絵のユリはマドンナリリーという西洋の古い品種)
シンテッポウユリ世にはばかる
そんなテッポウユリを親に持つシンテッポウユリですが、在来種のユリとの交雑等を起こす等純潔とは程遠く、なまじ「美しい」だけにどこのお宅でも駆除されず、大手を振って広がっているらしいことがわかります。環境省当局の悩みなんて知った事ではなく、仲間を増やしているシンテッポウユリの姿はたくましいものでした。
参考文献:テッポウユリ、タカサゴユリ、シンテッポウユリの比較
     シンテッポウユリは悪役令嬢 ユリ根を食べてみた
     百合はなぜ特別か その秘められた意味
     ユリ園芸史
     シンテッポウユリの種
(Reported By S)