【MINI取材】準備で安心 もしものトイレ!

災害時のトイレについて 11月の講演から

震災被害者へのアンケート「何が困った?」ダントツ1位は「トイレ」問題
11月14日片瀬公民館で標記の講演が行われました。今回は当日の説明を再現して紹介をしたいと思います。講師の宮本さんは片瀬にお住まいで防災士の資格をお持ちの方です。今回もう一人、リモートで講師をして頂いたのが彌永(いやなが)さんで大牟田市の社会福祉協議会の方です。当ホームページでは以前、在宅避難についての特集でトイレの話を紹介しました。片瀬山では在宅避難の方が多いのですが、避難所避難・在宅避難にかかわらずトイレ問題は避けて通れない重要な問題です。今回の講演で、携帯トイレの実際の使い方について貴重な体験をする事ができました。

講師の片瀬在住の防災士 宮本さん 
大牟田市からリモート参加での講師 彌永(いやなが)さん お二人は東北の震災の時に共に被災地支援の活動をする中で知り合い、今回は特にトイレ問題に詳しい方として講師を引き受けて頂いたそうです

では早速講演内容をご紹介いたします。
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過去の災害で被災された方へのアンケートで皆さんが困ったのが断然「トイレ」でした。この問題は阪神大震災以来27年たっても解決していません。
具体的にトイレの何が困るのか?
それは「断水によって 水が流せない」のです。さらに「(仮に水があって、その水を流しても)流れない」のです。実はバケツの水を一気にかつ静かに流すコツが必要なので、「勢いがありすぎて跳ね返るか、静かすぎて残ってしまうか」のいずれかになってしまうのです。では、トイレのタンクに水を入れればよいのでは?という意見が出ます。

タンクに満タンの水を入れればよいのですが、大量の水を用意して運ぶのは大変ですし、タンクは満タンにして使う事が前提で、途中でなくなるとその後使えなくなってしまいかえって大変です。またきれいな水でないと故障の原因となるので、メーカーは「風呂の残り湯をタンクに入れるのはお勧めできない」と言っています。
また、下水道が使えなくなっている可能性があります。(処理場が動かない、下水道の破損)大丈夫とわかるまで水は流さないほうが良いのです。結局「トイレが使えない」状態に陥ってしまいます。(東日本大震災から10年 トイレ問題はデリケートで声に出しにくいため、対策が遅れてしまう

トイレの我慢は命取り

大半の人は発災後3~6時間でトイレを我慢できなくなる! 発災から何時間でトイレに行きたくなったか?(作成:NPO法人日本トイレ研究所 調査:阪神淡路大震災・尼崎トイレ探検隊/東日本大震災・日本トイレ研究所/熊本地震・岡山朋子(大正大学))

大きな災害ではある地域のトイレが全部使えなくなっています。そこで被災地の多くの避難所に向けて仮設トイレが送られました(建設現場等によくある あれ です)。しかし7割近くの避難所で、それが届くのに4日以上かかっていました(東日本大震災での調査)。しかしその間もトイレは我慢する事ができません。そして、東北の震災での災害関連死の要因についての復興庁の下記データをご覧ください。

東北各県の災害関連死の要因として避難所生活での肉体的・精神的疲労が最大の原因になっている

災害関連死にトイレが関連すると疑われています。トイレを我慢することによる基礎疾患の悪化やエコノミークラス症候群、さらにトイレに行かなくて済むように水分や食事の摂取を控えることが原因で体調を崩してしまう等です。これは在宅避難でのおうちのトイレでも同じ問題が起こります。
水を流さずトイレを使うしかない!
結局、こうしたトイレの不安を確実に解消するためには「排泄物を袋で何かに吸わせて固めて捨てる」しかないのです。実はこれは「携帯トイレ(非常用トイレ)」の使い方そのものです。「それはそうでしょう」と納得されたあなた、知っているのとできるのとは別なのです。経験無しでは大変です。今日は、その経験を持ち帰っていただきましょう という講座です。
ただ、お使いになるトイレは便器は壊れていない が前提です。
おおまかな順番は以下の通りです。
1便器に下袋をかぶせる
2下袋をテープで固定する
(→下袋はずっと固定)
3下袋の上に中袋をかぶせる(→中袋は使うたびに交換。家族の場合複数回使うのは可)
4吸わせる・固める物を入れる
5用を足す
6中袋のみを取り出し、空気を抜き、固く縛って保管する

順に写真を使ってご説明します。(講演会場では実際に講師による実演後、参加者が自分でやってみました。以下はその時紹介されたYouTubeで彌永講師自身が説明されている動画からの画像です。ぜひご自分でやってみてください。)

下袋は大きなゴミ袋等を利用します(トイレセットには便器カバーという名前で入っています)。下袋によって、便器の水に触らずに中袋を取りかえて利用する事が可能になります。テープはガムテープ等が良いでしょう。
中袋はトイレセットの汚物袋など。なければ一般ゴミ袋(40リットルのもの)でも結構です。

なぜ上記のような中袋の三角形を作るのか?ですが、便器の底の形に合わせた空間を作って衛生的に汚物を袋の底に収めるためです。携帯トイレ(非常用トイレ)のセットには中袋に適した黒い袋や凝固剤等がセットになっています(→後述)。

これで便器の形にそった空間ができあがり、袋の角部分に汚物が収納できます
中袋を便器の形に合わせて、便座で固定し、凝固剤やなければ新聞紙をちぎって投入し、これで準備完了!

この後、用を足します。皆さん自分のおしっこの量はどのくらいかわかりますか?成人では200~400mlです。つまり500ccのペットボトル半分強くらいにはなります。この後、中袋のみを取り出して空気を抜いて固くしばって保管し、可燃ごみの回収がおこなわれるようになったら出します。おうちのトイレでご家族で短い時間袋を共有するのはかまいません。(凝固剤等「固める」ものはそれにあわせた量が必要になります。

携帯トイレ(非常用トイレ)セットの例:中袋(汚物袋)50回分、凝固剤50回分、下袋(便器カバー)2枚セットでAmazonで2640円(2022.12.24現在)です。
これ以外にも様々な組み合わせや数量のセットが多種類販売されています。

例にあげたセットの中に入っているものの説明

今回の記事内の実演部分の写真は講師の彌永さんがご自分で実演説明しているYouTube動画から作成しました。そのリンクは下記です。
中袋のたたみ方・かぶせ方詳細 (YouTubeでは「もしもの時のトイレの話4番外編というタイトルになっています。
その前段の携帯トイレの必要性の説明等とあわせた今回の講演内容については以下のYouYubeが参考になります。これらを順に1~4をご覧になればほぼ今回の講演内容がわかります。
「もしもの時のトイレの話1」
「同2」
「同3」
今回の講演では、これらの説明の後、受講者が実際にこれらの袋を簡易トイレにはめ、座ってみて、モノに見立てたテニスボール入りの黒い袋をしばる所まで体験する事ができました。
以上が講演内容です。
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【レポーター感想】
やはり「知っているのと体験するのは違う」ので、ぜひ皆さんも携帯(非常用)トイレセットを購入して、一度練習し、良いと思ったら備蓄する事をお勧めします。今回の講演の記事化を了承して頂いた講師の宮本さん、彌永さん、講演を主催された片瀬市民センターの皆様にお礼申し上げます。
(Reported By S)