【MINI取材】下水はどこに流れていくか?その2

老朽化対策と災害対策 我々はどうすればよいのか

前回に続いて、藤沢市の下水道総務課に伺って、お聞きした内容をご紹介します。前回同様予習していった内容を先に記し、次に質問とお答えの内容を記します。
下水道総務課のFさんとMさんにお答えいただきました。

予習で調べた事今後下水管の補修等の時期を迎える
下の藤沢市の下水道普及率の過去の推移をご覧ください。今から50年前、急速に藤沢市の人口が増え同時に下水道の普及が進みました。下水管の寿命が50年くらいと言われているので、そろそろこの普及期の下水管が一斉に寿命を迎える事がわかります。

普及率処理人口(処理区域内の人口)/ 行政人口住民基本台帳による市の人口) で算出 冊子「ふじさわの下水道」のグラフを一部加工

下水管の老朽化が進むとひび割れが発生したり、継ぎ目が傷んだりして、水漏れによる道路の陥没を引き起こしたり、地下水に汚水が浸透するなどのおそれがあります。
ここからQ&Aです。

下水管の寿命対策:掘り起こして交換 ではなく、管の内部に丈夫な管を作って再生する:更生工事
Q:寿命を迎えた下水道管はどう交換するのですか?
A:実は「交換」ではなく「更生工事」というのをやります。古い下水管の施工年次を管理して(ストックマネジメント)、計画的に年間300~350㎞にのぼる下水道管を目視やファイバーカメラで点検しています。必要に応じて、清掃(高圧洗浄やバキュームで汚れを吸い取る)や更生工事を行ないます。

この更生工事というのは、「管の内側に地震に強く傷みにくい新たな管を作って元の管と同等の機能を持つようにする」というものです。下水を流したまま掘り起こさずに工事を行う手法が編み出されており、この工事で、補修だけでなく耐震化を図ることもできるわけです。様々な太さにも対応する方法があります。
Q:なるほど掘り返さないで直す というのは驚きですね。こうした下水管の老朽化・汚れ防止のために我々にできる事はあるのでしょうか?

「藤沢市下水道ビジョン」から 太い幹線の工事 細い管でも様々なやり方がある 下水を流しながらおこなっている

A:油による詰まり というのがよくあります。例えば飲食店街の下流等です。また下水処理においてもとても負担になります。飲食店に限らず一般のご家庭でも油を流すというのはやめて頂きたいです。固化してゴミとして捨てるとか、紙でふき取るなど、下水道に流れ込むのを防いで頂きたいです というのがお願いです。他にも、「モルタル」「ゴミ」「薬品」は流さないでくださいとお願いしております。(くわしくは→こちら

大地震の時に片瀬山で水洗トイレに水は流せるのか?
Q:大地震が発生した時にトイレに水が流せるのか?という事が気になっています。最近テレビで「地震で下水道は使えなくなる」という話を、目にしました。大地震では上水道も止まるでしょうから、キッチンで水は流さないでしょうが、トイレはそうもいきません。うちではトイレを流すために、風呂の水をとっておく というのを昔からずっとやっていたのですが、それが使えないの?というのが素朴な疑問です。
A:地震が起こると、下水管の破損(管の破損、接合部分のずれ等)、処理場の停止(停電や破損)が起こり得ます。上流から下水が流れてくると破損場所付近で汚水が噴き出る恐れがあります。藤沢市南部地域の場合は地盤の液状化の心配もあります。どこでどんな破損が生じたか、その上流で利用制限が必要なのか、がわかるには約1週間の時間が必要です。そして破損があった場合は仮復旧には約1か月くらいかかるだろう というのが予測です。
そこで地震発生後の住民の皆さんへのお願いとして
①「状況がわかるまでは使わずに、その間できるだけ携帯トイレや簡易トイレをご利用いただけないか」という意見もあります。

家具調トイレは簡易トイレの進化系で、椅子の下に汚物を溜めるバケツがありますが、普段から介護等で室内利用し、災害時も使えるので利用価値大です。

→携帯トイレ・簡易トイレについての備え) 
一方で、
②「色々な対策も取っており、必ずしも破損→噴き出すとは限らないので、お金を頂いて整備をしている立場で一律に言うべきでない」という考え方もあり、悩ましい所です。
これは、
1状況把握にかかる時間を短縮 
2更生工事の着実な整備 
3災害時のBCP(事業継続のための計画をしっかり作っておくこと)立案
 等の対策をとっており、下水道管の破損の状況を確認した中で、必要に応じて、使用制限を行っていくという考え方です。現状は①から②に移りつつある所です。片瀬山のような戸建て住宅地の場合とマンション等では条件が異なるので一律に言い切る事は難しいのも事実です。現状は、こうした対策を進める事で確実に②を言えるように努力をしている所です。

我々の備え:トイレが流せなくなる場合を想定して各家庭で備えておこう
Q:確かに悩ましいお立場だと思いますが、どちらにしても「トイレが流せなくなる可能性がある」ので、それを想定して備えておこう という事には変わりない と思いました。
A:ご理解いただきありがとうございます。下水道の耐震性を高め、今後も健全に維持するための費用が必要ですし、利用者の皆様に幅広く現在の状況をご理解いただく必要があります。PRがとても大事だと思っています。

片瀬中学校避難所用マンホールトイレは心配ない

校庭脇の建物横の林の中に並んでいるマンホール この上にテント式の目隠しとその中に座る所を設置してトイレとして利用する。

Q:下水道についての不安がある中、片瀬中学校にある災害用マンホールトイレは地震の時に使えるのでしょうか?下水道が使えない可能性があるのなら避難所に来た人達が困りませんか?
A:実は今避難所に設置されているマンホールトイレは下水道にはつながっていないのです。

従って下水道が使える使えない というのは関係がありません。

つまり、片瀬中学に今設置されているマンホールトイレについては、下水道の事は考えなくてよいです。
ただ、今後作る避難所のマンホールトイレについては、衛生面等を考えて、耐震化を施した下水道に接続する事を検討しています。
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インタビューを終わって—
〇早くから整備が進んだ地域では、合流式で進めたために、一定量の雨水は未処理のまま川に放流されるというのは、意外な事でした。そんな中で片瀬山域内は分流式で先を見た造成だったのだと分かりました。マンホールをよく見るようになりました。

マンホールトイレの蓋は細長の穴があくようにできている。

〇災害時の下水道は使えるかどうかは被害状況をきちんと調べないと分からない という事なので、片瀬山住民としては、どうあっても良いように、携帯・簡易トイレ等で備えておくのが良いだろうと思いました。
〇今回ご協力頂きました、下水道総務課の皆さんに心よりお礼申し上げます。
(Report By S)