【はじまりを探して】防犯パトロール その2

防犯パトロールはどのようにして始まり、そして続いてきたか

ここからは、過去を知る多くの方からの聞き取りを元にご紹介します。
●片瀬山でも犯罪が多発していた時代があった
話は約20年前にさかのぼります。1999年から2001年にかけて片瀬山では犯罪が頻発していました。車上ねらいや空き巣(窃盗)等です。(1999年 車上ねらい7件、消火器泥棒9件 2000年車上ねらい27件、窃盗10件、2001年 車上ねらい13件)
特に2000年には車上ねらいがわずか二日で12件発生し、一方で、学校近くでのひったくり事件や公園付近での痴漢事件も発生し、片瀬山全体で防犯に関する危機意識が高まりました。
●「こども110番」「防犯パトロール」の原型がスタート

2000年(平成12年)3月駐在所だより号外 車上ねらい注意喚起 
2000年5月駐在所だより 学校近くでのひったくり発生を伝える内容

自治会でも問題となり、2つの取組みが提案されました。一つは藤沢市の商店街地域で始まっていた「こども110番の家」という活動が住宅地である片瀬山でもやってみたらどうか?。もう一つの取組として「防犯ボランティア活動」もやってみたらどうか?という提案です。これらが片瀬山で今も続いている防犯活動の原型となりました。
「こども110番の家」というのは、「子供たちが助けを求めたい時に駆け込める家ですよ!」という目印を掲げましょう! という運動で、今でも多くのご家庭が登録されており、ご存じの方も多いと思います。
「こども110番の家」はこの年とその前年(1999-2000年度:平成11-12年度)の役員の方が中心になって203軒の家が登録しました。また防犯ボランティアパトロールも108名の有志の方の登録がありました。
この時、家に設置する目印とパトロールの腕章に子供会のお母さんが作ってくれた片瀬山独自で共通の「スマイル君マーク」が登場したのです。共通マークである事からいずれも防犯の活動であるという一体感が高まりました。

現在も一部のお宅の郵便受けには20年前の「スマイル君マーク」が残っています 左の拡大が右 スマイル君の下にかすかに「こども110番」という文字が見える

●こども110番が全市展開
翌2001年(平成13年)にはそれまで商店街を中心にした活動だった「こども110番」は片瀬山での盛り上がりを受けて、藤沢市全市での住宅地を含めた展開をすることとなりました。それに合わせて、スマイルマークから新しい全市統一マークに交代して今に至っています。2003年(平成15年)には全市で3130軒の登録がされました。

2001年5月駐在所だより スマイルマークから新マークへの移行を伝え、無理な張替えはしない事もわかる
現在のこども110番のマーク 助けを求める子供にすぐわかるように、プレートを玄関先に掲げます。片瀬山では今もこの活動が活発で現在でも281件の登録 * があり高い参加率を示しています。助けを求められた時の対応マニュアルもあります。
(*登録後辞める方もあり、実稼働数と異なる可能性有)

●窃盗対策として:防犯パトロールを全丁目での活動に拡大
一方、空き巣などの窃盗の件数は相変わらずの状況が続きました。2002年(平成14年)11件、2003年19件、2004年24件を記録し、2004年3月(平成16年)の自治会総会で駐在所からの要請もあって、ボランティアによるパトロールから各丁目での防犯パトロールに拡大する事になりました。藤沢市全体でも犯罪の急増があり、全市各町内会でも防犯パトロール隊の結成が呼びかけられました。

片瀬山で先頭を切ったのが5丁目で(7月10日)、その後各丁目が続き翌2005年(平成17年)の3丁目のパトロール開始で全丁目のパトロールが揃いました。2005年の窃盗件数は6件と激減し、この活動が影響したと考えられました。以降は5件/年を超える事はなくなりました。
当時この活動を中心的に支えた自治会長さんは「3月の総会で次の年度の会長さんと一緒に話を聞き、私も数年間は参加してノウハウを伝えていくことにしました。楽しくやった方が良いからと思い、拍子木も用意して子供も一緒に月2回夜の7時のパトロールをやる事にしました。」と、当時の雰囲気を話てくれました。

2004年3月の駐在所だより 3月の自治会総会でパトロールの議論が行われた事を伝えている
2005年10月の駐在所だより 全丁目でパトロールがおこなわれる事を伝えている


ひったくり対策として防犯カメラの導入
このような活動のおかげで窃盗犯が減少した一方で、ひったくりが目立つようになりました。2008年4件、2009年6件と件数も増えてきました。車やバイクを使った外部の犯行が多かったので防犯カメラが有効と思われ、2009年に片瀬山の道路の要所に設置された防犯カメラが劇的に効果を示した話は、片瀬山防犯カメラ その1その2その3)に詳しく記しました。このように「こども110番」「防犯パトロール」「防犯カメラ」と犯罪の種類に合わせた対策によって、片瀬山の防犯対策は着々と成果をあげ、治安の良い街としての評判を得ることになりました。そして、今では振り込め詐欺や還付金詐欺が横行していて、この対策が急がれています。
●防犯パトロールが一時衰退し、様々な形態で復活
しかし、その後何もかもうまくいっていたわけではありません。防犯パトロールの存続の危機を迎える丁目も出てきました。
2010年頃 一番最初に始めて、5年続いていた5丁目ですが、ある晩、高齢の自治会長と女性の防犯部長が子供を連れてパトロールをしていましたが、途中でクレームをつけられるトラブルがあり、しばらく中断せざるを得なくなりました。また担当する自治会役員の負担の重さ等からも各丁目でも中断せざるを得ない時期がありました。その後、頻度や巡回時刻、メンバー構成を変える等して継続可能な形にして復活し、さらに表彰を受けたり色々な紆余曲折を経て今日に至っています。従って今の運用体制は丁目によって異なり、様々な形となっています。
今回表彰を受けた3丁目は、3チームが10日毎という高頻度で町内をくまなく回っています。ここも一時中断した時期があるのですが、有志による体制として、夜ではなく夕方5時に行う形にして、女性も参加しやすくする等して継続しやすくなりました。街の変化を見ながら人とも触れ合いながら街を歩くことの魅力を打ち出しているのが、安定して長続きしている秘訣かもしれません。

2012年5月に撮影されたパトロール隊(3丁目)

●様々な活動を経て防犯につながっています
現在も各丁目の自治会の定例会には駐在所の佐武さんが顔を出して、片瀬山でおきた直近の事件についてお話してくれています。今回の取材を通して、両者(自治会と駐在所)の連携で先手を打った防犯対策が可能になり、治安の良い街を維持できてきた歴史があるのだと思いました。関係者の皆さん、取材にご協力いただいた皆さんに感謝申し上げます。(Reported By S)