【はじまりを探して】片瀬山販売パンフレット見つかる- その1

54年前の三井不動産の販売パンフレットに見る当時の理想の街

昭和44年2月(1969年)に発行された片瀬山住宅地の販売パンフレットをご紹介しましょう。そしてその背景等を次回ご紹介しようと思います。パンフレットはある住民の方のご厚意でご提供して頂きました。以下各ページについて解説をしながら進めますが、表示の仕組み上解像度が低くなっています。高解像度で全ページを見られるようにしてありますので、詳しくご覧になりたい方はそちらでご確認下さい。→高解像度でパンフレット全ページを見る

横28.3cm  縦25.0㎝という大きなパンフレットです

提供して頂いた方は、お父様が土地を購入した際のパンフレットを大事に保管されていたのだそうです。発行時期から見て、第3期販売*以降で使用されたものとみられます。その表紙は厚い紙に、当時珍しかった筆書きのロゴを使ったシンプルなデザインです。表紙をめくると、その裏は何も書いてなくて、見開き右側に短いフレーズが記されています。(*第3期販売時期について

そして、次のページから見開きページで住宅地の紹介が始まります。

見開きになると横は56.6cm という大きさになり迫力があります 片瀬山住宅地の下に京急有料道路の料金支払所も書かれていて、当時はまだ有料道路としての運用をしていたこともわかります。

左側ページでは、1眺望と立地 2住みよさへの配慮(造成・敷地内電柱・分流式下水道他)3将来を考えたマスタープランでのニュータウンで将来にわたって閑静な街になる事を宣言しています。これは当時住宅地開発競争に明け暮れた不動産業界に浴びせられていた「乱開発」という批判に対する三井不動産としての開発姿勢をアピールし、この事業に取り組む決意を示したものでした。
その次のページをめくると、見開きいっぱいの航空写真です。

昭和43年(1968年)10月撮影の航空写真 昭和42年末の第1期完工の結果でぼつぼつと3丁目と4丁目に家が建ち始めています。第1期完成に急遽間に合わせた新屋敷橋もつながり、1丁目高台の片瀬配水池の増設工事はまだ工事中です。

江の島と相模湾を臨む高台に広がる住宅地である事が一目でわかります。本当に海岸のそばであるかのように見えますね。
次の見開きはこの街での生活を想像してもらうためのイメージ映像です。この住宅地にやってくる大多数の人が小中学生を子供に持つご家庭であり、そうした人たちに文教地区であること、広い庭に木々を植えて暮らせることを訴える内容になっています。

左の写真はできたばかりの片瀬中学の正門前で撮影されたものである事がわかります

そして次のページが、当時このパンフレットを見たファミリーが一生懸命見たであろう地図です。当時中学生であった私(レポーター)もこのページの事はよく覚えています。中学校があり、プールはどこ、幼稚園ができ、公園があちこちにあって中学の前にお店がある、とその夢のような街を想像しました。当時そんな「計画された新しい街」なんて見た事が無かったからです。私たちにとっては街というのは昔からそこにあるものでしたから。

街の計画図 黄緑:植栽 緑:公園 紺:給水施設 ピンク:幼稚園 濃紫:商業施設 グレー:プール等 給水塔の下:三井の開発事務所

次は造成についての説明ページです。汚水雨水分離の分流式下水道システムを備え、自家用車の交通を想定して電信柱が敷地内に収納されて広く、安全配慮された道路でした。給水施設のおかげで高台でも水圧は充分あります。これらはいずれも、当時様々に取り上げられていた都市での住環境問題に対する配慮を示した先進的なものでした。(下水道について給水施設について

造成及び雨水汚水配管図面

各区画では緑化のために洋芝の種がまかれ、実際、夏になると区画全体が緑になりました。また下記で 電話 という所に、「電話線を架電している所です」とありますが、1970年の日本の固定電話世帯普及率はまだ15%、自家用車の普及率は20%を少し切るくらいでした。

各種付帯工事の説明

当時片瀬山からの交通手段は大坂を下りて藤ヶ谷バス停から藤沢へ出るか(20円)、あるいは京浜急行目白山バス停から大船に出る(40円)しかありませんでした。湘南モノレールが開通して片瀬山駅から大船に出られるようになったのは、2年半後の昭和46年(1971年)7月のことです。

交通、教育機関、官公庁、医療機関、年中行事等

ここに書いてある銀行金利はすべて年利9%以上という今では考えられない金利です。昭和は物価と給料がいつも上がっていた時代だったのです。環境維持のお願いとして、戸建て住宅専用であり店舗・アパートの建設をしないようにという要請が記され、さらに自治会の設立と加入を勧める内容が記されています。

申込方法、ローンについて、環境維持について、自治会について
パンフレット裏表紙
価格表表紙

裏表紙は、表紙に合わせた色のシンプルなものです。この他に緑色の厚紙に各区画の面積と一図と価格が描かれた価格表が提示されました。
このパンフレットを見て第1世代としてここに入居した人たちが、多くのローンを抱えながらここに家を建てました。次回はここを造成した三井不動産と家を建てた多くの人達の見た夢を探して見たいと思います。